「Google」の時代に「レコード会社」や「JASRAC」は必要なのか。

上で件のエントリに対するツッコミを入れてみたんですが、どうも上げ足取りに見えてしまうのでもう少し追記。

id:kowagariさんから、確かにメディアリテラシーについて考えることができた〜おれはおまえのパパじゃない〜というTBを頂きましたが、特にラストの部分、

別にレコード会社がこの世からなくなろうが、それに代わる何かが現れて、クリエイターとユーザーに今以上の利益がもたらされるなら、僕ら(僕らの時代らしいので例によって僕らっていいます)ユーザーには何の問題もない。レコード会社が本当に生き残りたいなら、ユーザーとクリエイターの利益を考えてバランスを取るしかないのに、そういう気配がほとんど見えない。だったらもういっそ潰れてくださいと。

は完全に同意見です。

実は、津田さんが主催する「デジタル音楽勉強会」に参加してきたんですが、そこでも同様の話がありました。


そもそもid:keithmentholさんは、レコード会社の視点から「音楽配信」に関して書かれているけれども、そこでは「市場(消費者)」に対する視点と、「外圧(海外及び業界外からの圧力)」が考慮されていません。

まず、ビジネスとして音楽業界を捉えた場合、当然メーカー側の視点だけでなく、消費者の視点も考慮しない限りは市場は成立し得ません。CCCD及び「輸入CD規制問題」などを例に出すまでもなく、レコード会社がユーザーをどのように捉え、どのように扱ってきたかは明確でしょう。それらの事実を踏まえて尚、レコード会社のビジネス論に同意するユーザーを確保し、現在の市場を維持できると考えているのでしょうか。僕には大きな疑問があります。

さらに、ナップスターが契機となり、iTMSでそれが爆発したように、技術的進歩が外圧として機能しビジネスの根幹そのものを変えてしまうことも考慮されているように見えません。例えば、ネット上の音声・音楽データを全て検索・管理できるシステムをGoogleが開発した場合のリスクなどは考えられていないように見えます。

つまり、「ビジネス」として考えた場合であっても、パッケージ販売に依存する現在のレコード会社の選択が「正しい」とは到底思えないのです。


ユーザーとしては、別にレコード会社やJASRACがなくなろうと、アーティストとユーザーがダイレクトに結びつくチャンネルが確保できればそれで構わないし、技術的には既に不可能ではないでしょう。

例えば大規模レコード店の代わりにAMAZONiTMSによって音源の流通がなされ、TVなどメディアへの過度な露出をする代わりにWEBでの効率的なプロモーションが行われ、大きなレコード会社の代わりにアーティストの創造性を守る小さなレーベルが無数に存在し、SNSSBMなどでそれらを共有する。そのような状況になる可能性だってあるし、僕らはそれでも困らない。アーティストも困らない。困るのは一体誰でしょうか?事実、世界中にはとても小さいながらいい音楽を作り続けているアーティストやレーベルがたくさんありますよ。

仮にも「某シンクタンクコンテンツ系の研究員」をなさっているのであれば、その辺りの状況も考慮して発言すべきで、「ユーザーへの利益誘導を目的として」既に活動している津田さんに対して、「メディアリテラシー」というメタ的な視点から「恣意的である」ということを理由に批判することに一体何の価値が見出せるのでしょう。ただの自己満足ではないんですか?

もし津田さんの見解に異論があるならば、彼の主張に明確な対立項を持って対峙し、「こうすれば業界の為にもユーザーの為にもアーティストの為にもなる」という対案を出すべきだと思いますが。

どうでしょう、5/17に第2回「デジタル音楽勉強会」が開催されますから、そちらに異論を携えて参加されてみては如何でしょうか。きっと面白い議論になると思いますよ。

現状で最悪の結末は、レコード業界が潰れることではなく、既得権益を守る為にレコード会社がユーザーの意向を無視し続け、市場全体が衰退し、クリエイターやコンテンツそのものが減少、文化的に死に向かうことしょう。大げさかもしれませんが、音楽を愛する者として、そのような状況にはなってもらいたくないですね。