「非モテ」をプレゼンする為の音楽〜Fountains of Wayne〜

inumash2006-05-14

いつまでも女性を自らに発見しなければ、女の子は少年のままで在り続けることもできるはずなのだ。
断片部 - inumashの犬小屋 - ナード系ギターポップ(パワーポップ)的男子

上記のエントリに対して、吉田アミさんから「男子が共感したオススメのものが知りたい」とリクエストがあったので、お答え致します。

非モテ」や「スクールカースト」の話を見ていつも思い出すのが、Fountains of Wayne(ファウンテインズ・オブ・ウェイン:公式サイト)というアメリカのギターポップバンドです。Fountains of Wayneは97年(アメリカでは96年)にデビューした4人組で、これまでに3枚のオリジナル・アルバムとB面集を1枚、リリースしています。

ポップミュージック黄金時代を思い起こさせる珠玉のメロディ、ムーグなどを効果的に利用したちょっととぼけた感じのポップさ、微妙にずれたコーラスワークなど魅力を挙げればきりがないのですが、「非モテ」的にはなんと言ってもルサンチマンとユーモアと切実さがない交ぜになった絶妙な歌詞でしょう。恐らく、「引っ込み思案で夢想家でちょっとオタクな男の子」を描かせたら彼らを越えるアーティストはいないんじゃないか、というくらいツボを突いてきます。

では、Fountains of Wayneの珠玉の名曲の中から、個人的に選んだ「非モテに贈るこの5曲」をどうぞ。


①Sink To The Bottom(1stアルバム「Fountains of Wayne」収録:97年)

セカイ系」なんて言葉が生まれるよりもずっと前に、同じ感情を切実に表現した「自意識の時代」のアンセム。世界への諦念を語りながら、それでも「君となら・・・」という希望を手放さない、祈りのような歌詞。何度も繰り返される「海は広くて青いから/僕は君と一緒に底まで沈んでいってしまいたい/ただそれだけなんだ」という行き場の無さは数多の「セカイ系」と呼ばれる作品に共通するものでしょう。彼らにしては珍しく、ルサンチマンもユーモアもない、ストレートな曲。


②Leave The Biker(1stアルバム「Fountains of Wayne」収録:97年)

見事なまでに「非モテ」の心情を表した、ユーモアたっぷりの歌詞が秀逸。アメリカのDQN=バイク野郎に向かって「どうせエロ本くらいしか読めないくせに」なんて揶揄っておきながら、「実はそのバイク野郎こそが憧れのあの娘の彼氏である」という残酷な現実を前にして、「ねえ君/お願いだからそんなバイク野郎とは別れて/そいつのハートを踏みにじってよ」としか言えない情けなさ。しかも、そう語っているのがアメリカでは「ハレの場」であるはずのパーティの会場であるというシュチュエーションが更なる郷愁を誘う。「非モテ」度ではダントツでNO1。


③Red Dragon Tattoo(2ndアルバム「Utopia Parkway」収録:99年)

大好きなあの娘の為に、「赤い龍の刺青」を入れに行く物語。好きな女の子に振り向いてもらう為にちょっと背伸びをしたり悪ぶったりすることは誰しも経験しているはず。しかしそこは「非モテ」。せっかく刺青を入れたのに、「僕は君に本当に相応しいんだろうか」なんて勝手に思い悩んだり、「まるで生まれていないみたいに僕のことを扱うのはやめてよ」なんて言ったりして台無しに。挙句、「シールじゃないの?」なんて言われて見事撃沈。ご愁傷様。ここでも密かにDQN攻撃は続いていて、当時猛威を振るっていたDQN音楽=へヴィロックの代表格、『KORN』(Rが反対にならない・・・)を揶揄ってます。


Stacy's Mom(3rdアルバム「Welcome Interstate Managers」収録:02年)

せっかく立ったフラグを無視して、まるで可能性のない方ばかり見てしまうのも「非モテ」の代表的な行動。ここではそれをデフォルメして、見事なまでの「ダメっぷり」を見せ付けている。ガールフレンドのお母さんを本気で好きになるという、まさに「それなんて・・・」なシュチュエーションと、「君じゃダメなんだ/お願いだから分かってよ」という自意識過剰っぷりが痛々しい。それでも「分かってる/いかれた妄想だって言うんだろ」と冷静さを失わないところがDQNとの違いか。ちなみに、この曲のPVはちょっとエロくて大好きです。


⑤Hackensack(3rdアルバム「Welcome Interstate Managers」収録:02年)

思春期を過ぎて周りから取り残されてしまった「非モテ」の心情を表すかのような寂しげでノスタルジックなメロディと歌詞。思い出の彼女をブラウン管の中で見つけて、自分が失った時間に思いを馳せながら、それでも「疲れたらいつでも帰っておいで/僕はいつまでも待っているよ」なんて語りかける。そんな時は永遠に来ないことは分かっているのに。この場所からどうアクションを起こすかが、残余としての人生を生きるのかそれとも別の可能性を見つけるのかを左右するのか、なんて考えたりする。


以上、個人的なお気に入りの5曲を並べてみましたが、他にも「パーティーに見事に置いてきぼりにされる曲」や「クリスマスイブにサンタの着ぐるみを着ている男が愚痴る曲」、「大物政治家の娘に恋をして狼狽する曲」など、面白い曲がたくさんあります。楽曲のクオリティはどれも素晴しいので、「洋楽なんてモテのアイテムじゃねぇか!!」なんて言わずに一度聞いて下さい。


と同時に、

ひとまずお休みだお( ^ω^) - 猫でもわかる!最近のはてな村の騒動のお話
kmizusawaの日記 - 外してるかもしれないけどついでに書いておく
watapocoの日記 - 「萌え」って言葉で女子の生き様をくくらないで欲しい

この辺はどう考えても非モテ側のプレゼンが下手というか、単純に「萌え〜」とか言ってれば相手が喜ぶと思い込んでいるところが「非モテ」たる由縁なのだろうか、などと考えた(頭のいい「文化系女子」が、単なる妄想による記号の集積でしかないラベルを貼られて本当に喜ぶなんて思わないでしょう、普通)ので、『「非モテ」を有効にプレゼンする』と仮定した上で選んでみました。

つまり、
①実際に「非モテ」かどうかは無関係
②心情的に「非モテ」を代弁している
③単純なルサンチマンに落ちるのではない
④音楽的に一般の人にも受け入れやすいポップさとセンスの良さ
の4点を満たした音楽として選んだつもりです。

自分の趣味・嗜好を一方的に押し付けるだけでは相手は振り向いてくれないでしょうから、例えばこの音楽みたいに自分の心情を代弁してくれるアイテムを見つけて、それを利用してコミュニケーションを取ると意外に上手くいくと思うのですが、ダメですかねぇ・・・。

ちなみに、これ系の音楽を好きな人は、所為「文化系女子」とラベリングされるタイプの女の子が多いと思います。

(追記:加野瀬さんの指摘(参照)を受けて一部訂正致しました。誤読誤読。でも現実の女性と単なる記号の集積を混同しちゃってる人はいると思うけど。)