「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を阻害しているのは経営側である。

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このエントリに対する反論その①

ホワイトカラー・エグゼンプション導入の意図に関しては池田氏の言う通りだろう。本当にその目的通りに運用されるのであれば。

また、確かに反対している議員などがどこまで現在の労働現場の実態を把握しているかは怪しい。

だが、この問題の鍵は、ホワイトカラー・エグゼンプションの制度設計や導入目的にあるのではない。全然違う。

労使間で交わす契約の履行の問題、即ち企業側のコンプライアンスの欠如こそが、この制度の導入を阻害している最も大きな要因なのだ。

企業間の取引と同様、「労働」に関しても雇用主(企業)と個人(労働者)との相互の契約が前提となっている。正社員だろうが派遣だろうが請負だろうがアルバイトだろうがそれは変わらない。

では現行法の範囲内で、この労使間の契約を額面通り履行している企業が一体どれくらいあるのだろうか。そのように言える企業はそれほど多くないのではないか。

つまり、現状で既に労使間の契約は不履行の状態に置かれているわけだ。

さて、例えば企業間の新たな契約を結ぶ際、最も重要なのはどのような事柄だろうか。

実績?コスト?知名度

だがそれより重要な事がある。

それは契約内容をその通りに実行してくれるかどうか。即ち「信用」である。

どんなに低コストで魅力的なサービスであっても、契約の不履行が恒常化している企業と新しい契約を結びたいと考えるだろうか。「YES」と答える人は頭のネジが緩んでいるとしか思えない。

ホワイトカラー・エグゼンプションを取り巻いているのは正にこの状況なのだ。バブル崩壊後、「成果主義」がどのような目的を謳い導入され、しかし現場でどのように運用されたのか忘れた人はいないだろう。派遣や請負の現場で起こっている問題も同様だ。「雇用の多様化」は言い訳にはならない。個人だろうが企業だろうが「法を遵守すること」は社会のにおける必須要件である。

確かにホワイトカラー・エグゼンプションに関して、「残業代ゼロ法案」などとするのは短絡的ではあるが、それを呼び込んだのはコンプライアンスを軽視し、本来の経営者としての責務を忘れたまま「経営努力=リストラ(本来のリストラクチャーとは別の意味の)」としてきた経営側の短絡に他ならない。その総括は本当になされたのか。

ホワイトカラー・エグゼンプションに反対している人々は、単にその制度そのものの導入に反対しているわけではない。それは表層に過ぎない。その根幹は、長年に渡る労使間の契約の不履行、あるいは契約の不均衡に対する「NO」なのである。そこを読み違えては問題の本質を掴むことはできないだろう。

何も「契約内容を100%履行しろ」なんて考えている労働者は少ないだろうが、ここ10年程の経験から労働者からの信用は限りなく「ゼロ」に近づいている。ホワイトカラー・エグゼンプションがどのような目的で導入されるにせよ、それが契約通りに実行される保障は何処にもないのだ。結果「残業代ゼロ制度」として運用されると考えるのも仕方がないだろう。

もし本気でホワイトカラー・エグゼンプションを導入したいのならば、いくら労働者にこの制度の意図を説明しても意味がない。経営側にコンプライアンスを徹底させること。実はこれが円満な制度導入への近道なのである。

導入に反対している人達は、何もそんなに難しいことを要求しているわけではない。「契約を履行してくれ(あるいはその姿勢を見せてくれ)」と言っているに過ぎない。

労使の信頼関係が再構築されれば、この制度の導入はそれほど難しくはないのだ。

「とにかく制度が導入されさえすれば良い」と言うならば話は別だが。