左翼問題の再調査が必要だ。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/a82e0465c89ec49f7b01a51a9273e375

うーん…
前提となる認識がズレ過ぎてて、ちょっとお話にならない気がする。

まず、ブクマコメントでも突っ込まれてたけど、「左翼の最後の砦」が「歴史認識と地球環境」なわけないよね。日本の左翼を対象としてるのか、それとも世界的な傾向の話をしているのかは分からないけど、「左翼の最後の砦」は「弱者の存在」であり「格差の問題」であって、「歴史認識」や「地球環境」なんて話は使い古されたロジックのひとつに過ぎない。戦線は既に移動しています。

それにさ、『「日本は遅れている」「欧米では**だ」というのが、戦後の左翼(および近代主義者)のマントラだった。』とあるけれど、では池田氏の語る「市場万能論」は「欧米(というかアメリカ)追随」でなくて何なの?出所もそれを肯定するロジックも同じでしょ。田嶋陽子を馬鹿にする前に、自身の言説をもう一度見直してみては如何だろうか。

問題の本質は、『何所を参照とするか』ではなく、『参照を「参照」として扱えず、単なる追随に終わる』ことにあるわけで、「参照」を分析し問題点の抽出とカスタマイズを行う作業こそ真に必要とされる行為だと思うんだけど、「左翼」にしても「新自由主義」にしても、結局は単なる「追随」しかしてこなかったわけでしょ。「出所が何所か」なんて大した問題じゃなく、「選ぶことで満足して考えることをしなかった(今もしてない)」というのは、どちらにも言えることだと思うのだけど。

あと、「環境問題が怪しい」ってのは同意する部分もあるのだけど、それが「リベラルの専売特許」かというとそうでもないよね。例えばアメリカやイギリスでもキリスト教保守派が地球温暖化防止の大きなキャンペーンを行ったり、保守派政党が環境問題への積極的な取り組みを行い支持基盤を固める、なんて動きもあるわけで、それを利用しようというのはどの勢力でも同じことでしょう。そもそもイデオロギー的に見れば、「リベラル」より「保守」の方が「環境保全」に対して積極性を持って然るべきなわけだし。

だから、『地球環境問題は、アル・ゴアに代表されるリベラル派の世界的な結集点になっている。』なんてのも大間違い。池田氏が「左翼」とか「リベラル」を短絡的かつ近視眼的にしか見ていない事が良く分かる。

現在、リベラルに共通した基盤となっているのは、「反グローバリゼーション」及び「反帝国」という文脈であり、それが「貧困」や「戦争」や「環境」といった形で表出している、というのが基本認識。だから、「環境問題」は単なる「グローバリゼーションが引き起こす問題のひとつ」として扱われているに過ぎないよ。90年代後半くらいからの左翼・リベラルの基本的な動向を押さえれば、そのくらいすぐにわかることでしょう。

そもそも、『市場にまかせていてはだめで規制が必要だ、という社会主義的な主張はほとんど相手にされなくなったが、この分野だけは規制強化論が勝利を収めているようにみえるからだ。』と言うけれど、まさか自由/規制という単純な二元論で市場経済が語れると思っているわけじゃないよね?「オルタナティブ」とか「第3の道」とかって言葉を知らないわけでもないでしょう。

とにもかくにも、「左翼叩き」「リベラル叩き」にしては相当レベルが低い。ネット右翼とレベルは大して変わらないように思う。(そういう人達に限って、「地球温暖化は左翼のねつ造だ!!」とか言いながら、「中国の黄砂を何とかしろ!!」とか言うんだぜ。どっちも根本は同じ問題なのに。)

なので、左翼批判をしたいなら、もっと現状把握と事実確認をしてからやってくれ。問題点を洗い出すのは必要なんだから、批判的な視線は内部/外部問わずたくさんあった方がいい。でも、現状把握も何もしないで単にイメージだけで批判する言説は何の役にも立たないよ。ストレス発散にはなるのかもしれないけど。

池田氏には、「従軍慰安婦問題」と同じくらいの熱意でもって「左翼批判」をすることをお勧め致します。