暑苦しいのは“アニメオタク男たち(or元増田)”だけじゃない!

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まりねこさんの「アニメオタク男たちの暑苦しさ」という記事について - ARTIFACT@ハテナ系


アニメや音楽に限らず、『〇〇のため』というエクスキューズを入れながら自分の大好きなものを紹介する、という行為は特に珍しいものではないと思います。僕もやりましたし。それ自体は(やってる本人は)とても楽しいものです。

そして、その行為が『恋愛』という特殊な感情、あるいはその願望に結びつくのもまた珍しいことではないような気がします。というか、実に自然な流れなのではないかと。

例えば音楽オタクの生態を描いた『ハイ・フィデリティ』という映画では、『ベストテープをつくる』という行為が女性に対する最高の愛情表現として描かれています。


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同映画の特設サイトには、『ロッキング・オン』編集長(当時)山崎氏の非常に秀逸な解説が載っています(長いけど最高に“キモい”ので全掲載)。

「ハイ・フィデリティ」にも何度も出てくる「ベスト編集テープ」というやつ。今ならMDなんだろうけどここではテープにしておこう。僕もこれまで何本作ったか知れないほど作ったけど、やっぱり命懸けになるのは女の子に送る場合。


そりゃもうね、夕方につくり始めて翌朝まで、汗びっしょり、喉カラッカラ。で、テープの場合アナログだから並び替えとか曲間調整とかができない。となると、全部できあがってから聞き直してちょっとでも気に食わない所があると最初からやり直しである。というかたいていどこか気に食わなくてやり直したくなるものなのだ。そんな場合、どれくらいで妥協するかがその子への想いのバロメーターになったりするんだな。


音楽おたくにとって、好きな子への愛の強さは「ベスト編集テープ」の完成度に比例する! これはかなりの信憑性あります。そして男が作る「ベスト編集テープ」はもう一つ重要な事のバロメーターになっています。それはズバリ、その男の成熟度!


まず、その男が好きなジャンルや好きなアーテイストの曲がやたら多かったり、ひどい時にはそればっかだったりする場合、彼の成熟度はかなり低し、です。つまりコドモです。


次に、やたらとラブ・ソングのバラードや、せつない曲が多い場合。これは成熟度:中、です。つまりこれは「自分の想いをわかって欲しい、僕を好きになって欲しい」という、ラブレター代わりなわけです。


それはそれでいいんだけど、想いを伝えるならしっかりと自分の行動と言葉で、というのが成熟した男でしょう。それに、せつないバラードというのは基本的に想いが上手く伝えられないというもどかしさを表したものだから、それをそのままぶつけてくるのは一種の努力放棄。まだまだ自分勝手な恋愛観しか持ち合わせていないと言えるんじゃないでしょうか。


やはり、自分の音楽選択眼や、相手の女の子の好みや性格、喜怒哀楽のバランス、そうしたいろんな要素を巧みに織り込みながら、あくまでも「相手の女の子を心地よくさせる」ことができるかどうか、そこです。僕もようやくそれがわかってきたんですが、わかった頃には青春は終わってたんですね。


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いやー、暑苦しいことこの上ないですよね!このひとり相撲っぷり!実にキモい!元増田といい勝負です。

でも、すっごく楽しそうですよね。いや、多分楽しいはず。


あと、あまり関連付けてる人がいないみたいだけど、ネタ元になったエントリとちょうど同じタイミングでホッテントリ入りしていた記事に『benli: 「音楽業界を志望する学生が聞き落とすべきでない洋楽100」(ただし、やっと約3分の2)』っていう小倉先生のエントリがあります。

先日ゼミの学生と話をしていて、QueenBohemian Rhapsody(→)を知らないことを知って、少し驚きました。もちろん、著作権法ゼミの一方の柱であるIT系志向の学生が知らないのであればそんなものかなとは思うのですが、音楽業界に行きたいと思っている学生が20世紀を代表する名曲を知らないというのは相当問題なのではないかと危機感を抱いてしまいました。


 そこで、この連休中に「音楽業界を志望する学生が聞き落とすべきでない洋楽100」を作ろうと思っていたのですが、不思議な絡み方をする弁護士さんのお相手をして無為な時間を費やしてしまいました。そのため、100も列挙しきれませんでしたが、一応、この辺りは聞いていないとやばいよなということで、アップしてみようと思います。

benli: 「音楽業界を志望する学生が聞き落とすべきでない洋楽100」(ただし、やっと約3分の2)

と始まり、下にザザーっと楽曲リストが並べられていきます(元エントリでは50弱。完成型はこれ)。

で、そのリストが80年代のMTVヒットを中心に典型的なヒットソングを脈略なく並べただけだったのでブクマで結構叩かれてた(参照)んだけど、このエントリと元増田のエントリって、個別の作品への言及は別にして基本的にやってること同じなんですよね。

特に「音楽業界を志望する学生」というターゲット設定とか。

このような相手の抽象度の高さもポイントが高い。アニメを見ていなくても、漫画ぐらいは読んでいるだろうから、そこから趣味の傾向を把握すれば、勧めやすい作品はしぼられてくるはずだけど、そのような具体性は必要がないのだろう。脳内妄想の彼女相手に勧めたい!というからオモシロ度が上がったんだなー。一応「ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女」と書いているので、記事を書いた人に自覚はあるのだろうけど。

サブカル度が低い」というのは、サブカル度が高いとチェコのアニメとか見てたりするから、日本の2Dアニメはまずい!という判断でも働いたのだろうか。

「アニオタが非オタの彼女にアニメ世界を軽く紹介するための10本」が味わい深い - ARTIFACT@ハテナ系

ね?

もちろん、はてなー好みの中二病臭さは元エントリの方が数段上だけど、これも大概“暑苦しい”ですよね。過去のヒット曲を並べてそれが何かの意味を持つ(価値がある)みたいなのって、ひとりの音楽好きとしては元増田以上にちょっと苦笑いもので。“意味がない”とまでは言わないけどずいぶんと押し付けがましいよなぁ、というのが正直な感想です。(小倉先生御免なさいw)

ということで、暑苦しいのは『アニメオタク男たち』に限った話じゃないのです。んでもって、そういう行為の楽しさや切実さは、実は外部から見た時の“イタさ”以上に本人にとっては重要なものなんじゃないかと思うんですよね。


最初に書きましたけど、“誰かに自分の好きなものを理解してもらいたい”という願望は普遍的なものだと思います。でも、ベタにそれをやるのはやっぱり恥ずかしい。

そう考えていた人達にとって、元増田のエントリは、自分の願望を『趣味(センス)の否定』というリスクを極限まで減らした形で表現できる最高のテンプレとして機能したんじゃないでしょうか(何か言われたら『ネタです。すいませーん。』で逃げられますから。)

そうじゃなければ、いくら“ネタ”として優秀でも、あそこまで派生エントリが増えるなんてことはなかったと思います。

派生エントリの中にも、『ネタの振りをして実はガチに自分の好きなものを紹介している』という人は結構いるんじゃないかな、と思ってます。そういう人に表現の場を与えたというだけで、元増田の人の功績は実に大きいのではないかと。

元増田の人は色々と言い訳をしているようですが、その必要はないんじゃないかと思いますけどね。自分の好きなものを紹介したいという願望も、それを恋愛に繋げるのも、別に特殊な欲求ではありませんから。誰もが持つ、普遍的なものだと思うんですよね。んでもって、そういう欲求ってのは大概“ひとりよがり”なものなんじゃないでしょうか。

だから、個人的には元増田の人はもっと堂々としてていいと思うし、まりねこの人は(自分自身の姿を含めて)もう少し状況を俯瞰する必要がある、と思います。あと加野瀬さんはこの手のネタが好き過ぎるのでもうちょっと自重汁!