例の「チョイオタがカッコイイ」って調査は「LOHAS」の時と似たような構図

http://japan.internet.com/wmnews/20070216/5.html
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/922556.html

たまには仕事に関連した話を(だから口調が丁寧)。わざわざ指摘するまでもないことだとは思いますが。

えー、色々なメディアでよく記事になっている「意識調査」とか「市場調査」ってありますね。

あれを大きく大別すると、

①メディア自身がコンテンツの信憑性確保の為に行った調査
②大学やシンクタンクなどが研究目的で行った調査
③リサーチ会社やPR会社が自社の調査・分析能力をアピールする為に行った調査
④大手メーカーなどが自社商品の差別化を図る為に行った調査
⑤特定の企業や商品・サービスのPRを目的とした調査

の5つになります。

①は純粋に記事を書くため、あるいは自社の言説の信憑性を確保する為にメディア自身が行う調査です。選挙前の意識調査や内閣支持率、あるいは大きな社会問題に関連した調査が多いです。当然、記事の内容にかかわるわけですから、その信憑性も高くなります。

②は大学やシンクタンク、研究機関がその業務の範疇で行った調査の結果を提供したものです。一般に開示することを目的として調査するものもあれば、メディアからの要請に応じて提供したものもあります。①のように、メディアが自社で調査を行う時間や予算が組めない場合、専門機関に該当する調査結果の提供を依頼するケースはよくあります。比較的ニッチな分野や専門性の高い詳細なデータが揃っているケースが多いです。また、このバリエーションとして業界団体などによる市況データなどもあります。

③はリサーチなどを生業としている企業(ネットリサーチだとこことかここが有名かな)が「商品」としての調査能力を外部にアピールすることを目的とした調査です。形のある「商品」を持っているわけではないこれらの企業では、「自社の調査結果」が新聞やTVなどで引用されることが最大のPRであり、商品価値となります。これらはメディアへの露出を目的としている為、ジャンル問わず時事的に注目される話題に関するものが多いです。当然「自社の商品価値」をアピールしなければならないので、いい加減な調査は行えません。

④は大手メーカーなどが自社の既存商品や新商品の新規性、及びライバル商品との差別化を図る目的で行う調査です。後述の⑤に近いのですが、ある程度マーケットシェアを獲得している企業が行う調査なので、その信憑性は比較的高く、またその企業(商品/サービスブランド)に関する市場調査も兼ねているケースも多い為、マーケットデータとしてはかなり価値があります。最近ではこの上位バージョンとして「ホワイトペーパー」というものも一般化しつつあります。

⑤これは④の劣化バージョン、あるいは純粋にPRを目的とした調査と考えてください。例えば何か新しい商品を発売する場合、事前にそれらに関連する調査を行いその結果を合わせて発表する、あるいは事前に「バズワード」として流通させておくことによって効率的にPRを行う手法です。商品PRが目的の為、その信憑性には薄く、また調査結果を恣意的に解釈するケースもあります。PR的にはよく行われる手法です。

さて今回の調査の場合はどうでしょうか。

記事の元となったプレスリリース(参照)によると、この調査を実施したのはアイシェアという会社です。

株式会社アイシェア(http://www.ishare1.com/

会社概要によると主な事業は

メールサービス事業
インターネットリサーチ事業
携帯向けコンテンツの開発・作成・運用

さらに運営しているサービスをよく見てみると、

萌える待ち受け、着ボイス「萌えさま」( http://me.club.jp/ )
萌え計イラスト提供「チャレンジエッグ萌えたま」(http://blog.ishare1.com/moetama/

などオタク系コンテンツを利用したサービスを運営しています。

また、上記リリースの末尾には、

当社ではオタクのようなニッチなマーケットデータも含め企画や紙面などで必要とされるリサーチデータを無償でお届けできる新しいリサーチ事業を積極的に展開開始いたしました。是非ご活用いただければ幸いです。

との文言があります(この調査以外に関するリリースにも同様の記載あり)。

つまり、今回の調査は③に近い⑤のパターンであると考えられます。企業やサービスのPRを目的とした調査であるということです。

調査の概要をもう少し詳しく見てみると、有効回答数が811名となっていますが、その母数やスクリーニング調査の内容に関する記載もなく、また自社サービスの登録会員の属性も開示されていない為そのデータに関する信憑性はかなり薄いものと考えられます。極端な話、上のサービスなどとの関連も考えるとかなり偏った属性の人達にのみリサーチしたということも否定できません。

ですので、この調査結果を見て「これからはチョイオタだ!!」なんて考えない方がいいでしょう(さすがにそんな人はいないと思いますけど)。

あるある大辞典」の問題以降、メディアによる「データの捏造」が問題となっていますが、メディアが捏造していなくても、このように恣意的な内容がさも一般的な意識であるように流通するケースも多いのです。

これも「メディアリテラシー」の話になりますが、メディアに掲載されたデータが「捏造されていないか」という判断だけでなく、その参照されているデータが「何処が」「どのように」集めたものなのかを知ることも重要だと思います。

以前のLOHASの例みたいに、メディアや企業が作り出す「大衆の意思」に踊らされることになるのは避けたいですね(これと似たようなお話です)。


ちなみに、なぜか例のリリースには、

こうした事情に詳しいゲームメーカーのセガに『チョイオタ』市場に関して取材をしたところ、2月22日発売される「デストロイ オール ヒューマンズ!(http://dah.sega.jp/)」では、ゲーム内容を越えた所でも『チョイオタ』に喜んで貰えるセリフやキーワードが盛りだくさんという。

との記載がありますが、なんなんでしょうかね?なぜセガ?しかも協力先が宣伝部になっているんですが・・・

広報部ってなくなったんですかね?サミーと合併する前はあったんですけど・・・