古市目線で振り返る2015年のJリーグ
「サッカーは全然ゴール入らないから見ててつまらない」社会学者の古市憲寿氏がフットボールを口撃!|theWORLD(ザ・ワールド)|世界中のサッカーを楽しもう!
1週間くらい前に話題になったこれ。不用意な発言が多い古市氏とはいえ、この発言についてはサッカーにあまり興味が無い人にありがちなもので大きく批判される種類のものではないと思います。サッカー界でもこの前提(ゴール数の増加=魅力の向上)に立って「競技性を損なわない範囲で如何にゴールを増やすか」について苦心しているのが実際のところです。
ということで、今日は「たくさんゴールが入る=おもしろい」という“古市目線”に則り「どれだけゴールが入ったか」という視点で2015年のJリーグを振り返ってみたいと思います。
なおデータを扱う関係上サンプル数が多すぎると(私が)大変なので、対象はJ1レギュラーシーズンのみに絞らせていただきます。J2・J3党の方、ごめんなさい。
最終順位や得失点等の基本情報については下記を参照してください。
http://www.jleague.jp/standings/j1/final/
(何故かレッズよりも勝点が低いガンバが2位になっていますが、システムエラーなので無視してください。CS?ポスト?藤春?なんのことでしょう?)
古市目線で見る2015年のJ1レギュラーシーズン
2015年のJ1は18チームによる全306試合が行われ合計820ゴールが決まりました。これを1試合平均になおすと約2.68ゴールになります。1試合あたり2ゴール以上は入っている計算ですね。
では過去と比べて今年はどうだったのでしょう?過去10シーズンの総ゴール数と比較してみます。
年度 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ゴール数 | 873 | 976 | 867 | 783 | 790 | 813 | 869 | 855 | 879 | 774 | 820 |
試合平均 | 2.85 | 3.19 | 2.83 | 2.56 | 2.58 | 2.66 | 2.84 | 2.79 | 2.87 | 2.53 | 2.68 |
前年(2014年)からは50ゴールほど増えていますが、そのほかのシーズンと比べると控えめな数字ですね。とはいえ極端に少ないということはありません。ここ10シーズンはだいたい700ゴール後半から800ゴール後半までの間を推移しています。1年で100ゴール近く増減することもありますね。1試合平均はどのシーズンでもだいたい2点台後半になります。
唯一の例外が2006年の976ゴール(1試合平均3.19)という数字。浦和がはじめてリーグ優勝した年なのでよく覚えていますが、ガンバとフロンターレがともに年間80得点の大台を越えたほか、優勝したレッズをはじめ60点台が4チーム、50点台も4チーム、さらに下位チームも大半が40点台を超えているというちょっとおかしな年でした(興味のある人は得点・失点の数字に注目しながらこの年の最終順位表を見てみてください)
もし古市氏がこの時期にJリーグを観ていたら「点が入らなくてつまらない」というイメージはもたなかったかもしれません(あんまり変わらないかな?)
古市目線で見る2015年J1の試合
シーズン全体でのゴール数を振り返ってみたところで、つぎに実際の試合がどうだったのかも見ていきましょう。
試合平均のゴール数(2.68)を中央値と考え、2点から3点を【普通の試合】、それよりゴールが少なかった試合を【つまらない試合】、それより多かった試合を【おもしろい試合】に分類してみます。
超つまらない(0点) | つまらない(1点) | 普通(2〜3点) | おもしろい(4〜5点) | 超おもしろい(6点以上) |
---|---|---|---|---|
23試合 | 63試合 | 133試合 | 66試合 | 21試合 |
以上のような結果になりました(超おもしろい/超つまらないの基準値は私の主観です)
【普通の試合】が少し厚めで、【つまらない/超つまらない試合】と【おもしろい/超おもしろい試合】はどちらも3割弱になります。サッカーは「必ず点が入る」というスポーツではなく、また得点の上限が決まっているわけでもありませんが、様々な要因から大きくバランスの崩れたスコアにはなりづらいことがわかります。
なお「古市目線で選ぶ2015年のベストゲーム」はこちら。
節 | 対戦カード | スコア |
---|---|---|
1st第11節 | 仙台−浦和 | 4−4 |
2nd第9節 | 神戸−鳥栖 | 7−1 |
2nd第13節 | 川崎−大阪 | 5−3 |
これ以外に合計7ゴール決まった試合が8試合ありました。
古市目線で見るJ1のチーム
リーグ、試合と見てきましたので、つぎはチーム(クラブ)にも注目してみましょう。
2015年のJ1でもっとも得点をとったチームはサンフレッチェ広島(73点)ですが、「どれだけゴールが入るか」を最重要視する古市目線では自分たちの得点だけでなく相手の得点(=失点)も重要な評価ポイントになります。そこで得点と失点の両方が多い順にチームの順位を並び替えてみます。
順位 | チーム | 得点 | 失点 | 合計 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 川崎フロンターレ | 62 | 48 | 110 | 3.24 |
2位 | 浦和レッズ | 69 | 40 | 109 | 3.21 |
3位 | サンフレッチェ広島 | 73 | 30 | 103 | 3.03 |
4位 | 清水エスパルス | 37 | 65 | 102 | 3.00 |
5位 | アルビレックス新潟 | 41 | 58 | 99 | 2.91 |
6位 | 鹿島アントラーズ | 57 | 41 | 98 | 2.88 |
7位 | ガンバ大阪 | 56 | 37 | 93 | 2.74 |
8位 | ヴィッセル神戸 | 44 | 49 | 93 | 2.74 |
9位 | 名古屋グランパス | 44 | 48 | 92 | 2.71 |
10位 | ベガルタ仙台 | 44 | 48 | 92 | 2.71 |
11位 | サガン鳥栖 | 37 | 54 | 91 | 2.68 |
12位 | 柏レイソル | 46 | 43 | 89 | 2.62 |
13位 | 湘南ベルマーレ | 40 | 44 | 84 | 2.47 |
14位 | 松本山雅FC | 30 | 54 | 84 | 2.47 |
15位 | FC東京 | 45 | 33 | 78 | 2.29 |
16位 | 横浜F・マリノス | 45 | 32 | 77 | 2.26 |
17位 | モンテディオ山形 | 24 | 53 | 77 | 2.26 |
18位 | ヴァンフォーレ甲府 | 26 | 43 | 69 | 2.03 |
Jリーグに詳しい人なら上位・下位の顔ぶれになんとなく納得してしまうのではないでしょうか。1位は予想通り川崎ですね。最低限の守備さえ整えればタイトルにも手が届くと思うのですけど…。18チーム中もっとも失点が少ないにもかかわらず3位に食い込んだ広島はさすが。逆に失点数が唯一60点を超えた清水が4位に。清水サポーターにとって本当に厳しいシーズンだったことがわかります。下位に目を向けると甲府の得失点数の少なさが目立ちますね。さすが一部で「塹壕戦の達人」と言われているだけあります。(スコアが)動かざること山の如し。
さらに各試合のゴール数についてもチーム別に見てみましょう。振り分け基準についてはリーグ全体を見た時と同じです。
チーム | 超つまらない(0点) | つまらない(1点) | 普通(2〜3点) | おもしろい(4〜5点) | 超おもしろい(6点以上) | つまらな率 | おもしろ率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
川崎フロンターレ | 1 | 6 | 13 | 11 | 3 | 20.6% | 41.2% |
浦和レッズ | 2 | 6 | 15 | 5 | 6 | 23.5% | 32.4% |
サンフレッチェ広島 | 3 | 5 | 14 | 6 | 6 | 23.5% | 35.3% |
清水エスパルス | 4 | 5 | 11 | 11 | 3 | 26.5% | 41.2% |
アルビレックス新潟 | 2 | 4 | 17 | 8 | 3 | 17.6% | 32.4% |
鹿島アントラーズ | 1 | 5 | 17 | 11 | 0 | 17.6% | 32.4% |
ガンバ大阪 | 1 | 7 | 15 | 10 | 1 | 23.5% | 32.4% |
ヴィッセル神戸 | 1 | 6 | 19 | 6 | 2 | 20.6% | 23.5% |
名古屋グランパス | 3 | 9 | 12 | 5 | 5 | 35.3% | 29.4% |
ベガルタ仙台 | 2 | 9 | 12 | 9 | 2 | 32.4% | 32.4% |
サガン鳥栖 | 4 | 7 | 13 | 7 | 3 | 32.4% | 29.4% |
柏レイソル | 3 | 8 | 12 | 10 | 1 | 32.4% | 32.4% |
湘南ベルマーレ | 3 | 5 | 20 | 5 | 1 | 23.5% | 17.6% |
松本山雅FC | 2 | 8 | 16 | 6 | 2 | 29.4% | 23.5% |
FC東京 | 4 | 11 | 12 | 6 | 1 | 44.1% | 20.6% |
横浜F・マリノス | 2 | 6 | 22 | 4 | 0 | 23.5% | 11.8% |
モンテディオ山形 | 6 | 8 | 10 | 8 | 2 | 41.2% | 29.4% |
ヴァンフォーレ甲府 | 2 | 11 | 16 | 4 | 1 | 38.2% | 14.7% |
川崎のおもしろ率が際立ってますね。清水は…一方的にボコられる試合が多かったのでしょう。おもしろ率では川崎に劣っているものの、浦和と広島の【超おもしろい試合】(6点以上入った試合)の数も見過ごせません。たくさん点が入る試合がみたければこれらのチームがオススメです。
逆に【おもしろい試合】の数がもっとも少なかったのが横浜。平均スコアを超えたのはたったの4試合で、6点以上入った試合は1試合もありません。また【つまらない試合】がもっとも多かったのがFC東京で、34試合中15試合が平均スコア以下となっています。それに続くのが山形と甲府。古市氏をJ1の試合に連れていく機会があっても、横浜やFC東京、甲府の試合は避けた方が良さそうです(※山形は残念ながらJ2に降格してしまいました)
古市目線で見るJリーグと世界
最後に欧州主要リーグの数字も見ておきましょう。欧州各国のリーグはほとんどが年をまたぐ秋春制をとっているため現行シーズン(2015-2016シーズン)がまだ終わっていません。そのため数字は昨シーズン(2014-2015シーズン)のものになります。果たしてサッカーの世界でも日本はズレているのか!?
リーグ | ブンデスリーガ | プレミアリーグ | リーガエスパニョーラ | セリエA | リーグアン | |
---|---|---|---|---|---|---|
チーム/試合数 | 18チーム/306試合 | 20チーム/380試合 | 20チーム/380試合 | 20チーム/380試合 | 20チーム/380試合 | |
ゴール数 | 843 | 975 | 1009 | 1024 | 945 | |
試合平均 | 2.75 | 2.57 | 2.66 | 2.69 | 2.49 |
チーム数・試合数が違うリーグもあるので総ゴール数の単純比較はできませんが、試合平均のゴール数で見るとJリーグと同程度なのがわかります。古市目線では「Jリーグと欧州主要リーグのおもしろさは大して変わらない」ということになります。リーグに関係なく、サッカーは「1試合にだいたい2点か3点入るスポーツ」と考えて良さそうですね。ほかのところではズレてる日本もサッカーの世界ではズレていなかった!
ちなみにこれらのリーグの中でもっとも得点&失点が多いチームはレアル・マドリード(118得点/38失点)でした。つぎがバルセロナ(110得点/21失点)。古市氏もこの2チームを追いかけていれば「サッカーの楽しさ」がわかってくるかもしれませんね。