何も考えずに楽しめるポップな音楽:最近のお気に入り

社会がどうこうとか匿名性がどうこうとか、なんだかんだ音楽に関して小難しいことを読んだり考えたりするのが大好きです。それと同じように、作品に込められた意味や感情を解読することも大好きです。

が・・・。

そればっかりじゃやっぱり疲れちゃいますよね。

時には小難しいことや複雑なことを考えず、頭を空っぽにしたままただ音楽を楽しみたい、なんて思うこともあります。あるいは、嫌な事があったり、仕事で失敗したりしたときに、それを忘れさせてくれるような楽しい音楽や、ちょっとした仕掛けにクスってさせてくれるような音楽が欲しくなることもありますよね?(僕はあります)。

ということで、そんな時にぴったりの“最高にポップな音楽”、最近のオススメアーティストを4組ほど。

■Sonny J

某“危険なネズミ”の変名との噂もある(ウソくせえ!)、リヴァプール発謎の覆面ひとりユニット。ジャクソン5を大胆にフィーチャーした『Can't Stop Moving』をリリースし話題に。「ヒューズ・コーポレーション、ストゥージーズ、メロウ・ゴールド期のベック、そして、インドのB級映画のサントラを混ぜ合わせた(イメージ)」と自らが解説するとおり、アルバムでもサンプリングコラージュをベースにしたカラフルなポップワールドを展開しています。最高。

Sonny J - Can't Stop Moving

Sonny J - Handsfree (If You Hold My Hand)


しかし、ゴー!チームやジュニア・シニアなんかと並べて聞いていると「ああ、アヴァランチーズの影響力ってやっぱ絶大なんだなぁ・・・」なんてことをつい考えてしまいます。あいつら今何やってんだろ。

The Avalanches - Since I Left You

2000年代の私的NO.1がこれ。柔らかいスネア、ディープハウスみたいにすっと消えるハット、美しく流れるストリングス、穏やかなホーン、ノイズ交じりのコーラス、全てが“鳴るべくして鳴っている”最高の一曲。サンプリングカルチャーにおける最良の成果物と言ってもいいでしょう。リミックスのためにこの曲を分解した小山田圭吾は、全てのサンプルが和音で並べられているのを発見し驚愕したらしい。何回聞いても涙が出てきますね、これは。


■Paul Steel

イギリス南部出身のSSW。若干20歳。2007年にリリースした手書きイラストが素敵な自主制作版『April & I』がヴァン・ダイク・パークスなどから賞賛され早々にPolydorからデビューが決まるも、メジャー第一弾シングル『Your Loss』がこけてお蔵入り。それでもめげずセルフレーベルからアルバム『Moon Rock』をリリース。元々コーネリアスのUKライブのサポートをしたりフジロックに出演済みだったりと縁があったため、日本ではEMIからのリリースとなっています。確かに日本人好みの音づくりをしてますね。

レコ屋のポップなどでは「ポストMIKA」なんて言われていますが、どちらかというとちょっと外したポップセンスで攻めるMIKAに対して、こちらは優れたメロディメイカーとしての才能を正面から押し出す“真っ当な”ポップアルバムになっています。

ブライアン・ウィルソンなんかを引き合い出す人もいますが、僕は能天気だった頃のリヴァース・クォモ(ウィーザー)っぽいと思いました。どっちも最高のメロディメイカーですが。

MIKA、パトリック・ウルフ、そしてこいつ(サム・スパローを加えてもいいかもしれない)を並べると、「BECK以降」に芽吹いたSSWの新しい形が見えてくるような気がしないでもありません。


Paul Steel - Your Loss

この曲は“キラキラ感”がイマイチなので興味がある人は彼のMyspaceを。真冬に半ズボンで雪に特攻する小学生並の季節外れ感を味わえます。リリースが6月とかだったら最高だったのに・・・。

MySpace.com - Paul Steel


■Thomas Tantrum

ティン・ティンズの“次”を探してる人にはこの人たちを。

UKの人気インディレーベルのひとつ「MARQUIS CHA CHA」からのリリースで注目されたサウサンプトンの4ピース。ミーガン・トーマス嬢(Vo)の舌っ足らずなロリボイス(決して“萌え”ではない)に注目が集まりがちですが、個人的にはヘロヘロになりがちな彼女のヴォーカルに併せながら“ギリギリで”同調を回避して脱臼ポップにしていないバンドの影の努力に注目したい。ずれてんだけど脱臼まではしてないんだよなぁ。すごい絶妙なバランス。いや、Good Shoesみたいなローファイ経由のインディロックも好きなんですけど。

ちなみにライブの評判がかなり良く、クリスタルキャッスルズやグラスヴェガスとも共演、レディングフェスにも出演済み。リリー・アレンも好きみたい。12月にケイジャンのサポートで来日。単独も決定。期待。

しかし今のUKのガールズ・パワーって本当に凄い。次から次へとこういうアイコンが出てくるんだもんなぁ・・・。


Thomas Tantrum - Work It

Thomas Tantrum - Shake It Shake It

Thomas Tantrum - Swan Lake

タイトル通り「白鳥の湖」をフィーチャー。なんというか、AppleのCMに使われそうな感じが凄くする。


■Patrick & Eugene

最後に一番胡散臭いのを。

カイリーミノーグ、ビヨンセサイモン&ガーファンクルなどを独自の解釈でカヴァーして名を上げた「TUMMY TOUCH」の“癒し系髭親父”二人組。

パトリックはパーカッションやプログラミングを、ユージーンがヴォーカル、サックス、フルートなどを担当。2ndアルバムとなる『EVERYTHING & EVERYONE』でも、ティーンエイジャーによるダンスフロアの熱狂を描いたアークティック・モンキーズ『I Bet You Look Good On The Dancefloor』をオールド・ジャズ風にカヴァーして“大人のラウンジ”に奪還してみせるなど、その遊び心とセンスは健在。

アフロ・ビート、カリプソ、ジプシーなど所為ワールドミュージックの要素を取り入れつつも、全てに「〜風」がつく感じの偽者くささが最高。もちろんビーチ・ボーイズ“風”の「Llama」なんかを聞けば、彼らのソング・ライティングのセンスが確かなものだということはすぐに分かるはず。

胡散臭さとポップさが絶妙なバランスで交じり合った、ちょっと他にはない「大人のポップ・ミュージック」ですね。こういうおっさんはいいなぁ・・・。


Patrick & Eugene - The Birds and the Bees

Patrick & Eugene - Don't Stop

I Bet You Look Good On The Dancefloor - Patrick & Eugene


以上です。この系統だと他にはオブ・モントリオールがグラムっぽくなってて面白かったですかね。結構前かららしいですけど。

of Montreal - Id Engager


後はシューゲイザーっぽいのと、それからブルックリン周辺のバンドが面白いです。その辺に関してはまたあらためて。