中田英寿引退。雑感。

Yahoo!スポーツ - 中田英寿緊急メッセージ

ああやっぱりという印象が強い。今回のW杯の彼のプレーは言われてるほど素晴しいものではなかった。確かに気持ちは入っていたけれど、彼の良さである「いい意味でのクレバーさ」が欠けてしまっていたように見えた。厳しい局面でスルーパスを狙ったり、あるいは本来なら相手選手を遅らせる場面で一発で取りに行こうとしてかわされたり。特にブラジル戦にそれは顕著だったように思う。

でもそれは彼の能力の問題なのでなくて、そこまでプレーにおいて主張している彼を誰もサポートしようとしなかった、という事実の裏づけなのだと思う。彼が必死さを見せれば見せるほど、他の選手が霞んで見えてしまったから。それは誰一人として彼に向き合おうとしなかった、という事なのだろう。それを彼一人の問題にするのか、それともチームの問題にするのかは意見の分かれるところだとは思うけど。

なんにせよ、ひとつの時代の終焉であることは間違いなく、また、その「終わらせっぷり」も見事なまでにウェルメイドされているので、多分なんだかんだネタにされるんだろうなとは思う。ただ、サッカー選手として彼の残した功績を超えるものを他の誰かが成し遂げられるかというと正直微妙なところだ。少なくとも、ペルージャの人たちは彼のことを忘れないだろうし、あるいはローマやボローニャの熱心なファンも彼のことを覚えているかも知れない。それは、本当に幸福なことだと僕は思う。

欧州のトップリーグでタイトルを獲得したのはローマ時代の彼(スクデット)とフェイエノールト時代の小野(UEFAカップ)だけだ。中村も、スコットランドリーグという欧州全体で見ると「2部」レベルでタイトルを獲得したに過ぎない。そしてそれは、やはりファンにとっては特別な記憶である。

もしかしたら、日本人よりもペルージャやローマのファンの方が純粋に彼を愛していたのではないだろうかと思うことがある。まあ、ただの思い込みかも知れないけれど。

彼の経歴を追いかけると色々と惜しい場面があって、もう少しタイミングが違えばユヴェントスACミラン、あるいはアーセナルなんかでプレーする彼を見ることができたと思うと少し残念だ。少なくとも、ローマでスクデットを獲得した頃の彼のプレーはそれらのクラブの要望を十分満たすものだったと思う。あのトッティと比較しても全く遜色ないプレーをしていたのだから。

今後の活動に関しては色々言われているけれど、差し当たり僕はピッチを離れた彼に全く興味は無い。監督とかコーチをやるなら別だけど、多分、そっちには行かないんじゃないだろうか。「サッカー協会に・・・」にみたいな話もあるが、もしそうなったら協会の体質も一変することが予測されるので、本音じゃないね。結局、彼はピッチを離れても「異質」なものとしてしか扱われないのだから。