月の音楽。宇宙の音楽。
月をテーマとした音楽はたくさんあって、歴史に残る名曲も多いけれど、僕が一番好きなのはやっぱりR.E.MのMan on the Moonだ。
92年のアルバム「Automatic for the People」に収録されていて、R.E.Mの代表曲としても有名な曲。もちろん、ポップミュージック史においても重要な曲だと思う。
有名なコーラスの部分はこんな感じ。
『ねえ、あいつらが月に人を送ったって、本当に信じる?/ねえ、あれにタネも仕掛けもないなんて、本当に信じる?』
作曲者のマイケル・スタイプは絶対に歌詞の直接的な解釈を語らないし、隠喩やアナグラムも多様するから、あの歌詞が本当は何を意味しているのは分からない。
ただ僕はこれを、「想像力の限定」を嘆く歌なんじゃないかと思っている。
科学の進歩によって、世界はどんどん広がっていく。なのに、僕の世界は変わりもしない。世界が広がる度に、僕はここに取り残される。月もあいつらに奪われてしまった。あそこが岩しかない死の世界だなんて、誰も知りたくなかったのに。
この曲を初めて聞いた時、僕はこう解釈した。
この間何気なく観た「遠い空のむこうに」で、科学者になって宇宙に行くという夢に挫折した主人公が、エレベーターの中からのぞく星空を見上げながら暗く深い炭鉱に引きずりこまれていくシーンでも、この曲を思い出した。
そういえば、アポロ計画の成功以降、月に関する歌を作る歌手は激減したという記事を何かで読んだ。月がテーマなわけではないけど、レイ・ハラカミさんのやったプラネタリウムのやつ(参照)も宇宙に何かを託すというよりは、「プラネタリウム」という環境を強く意識したつくりになっていたように思う。「何処かに連れて行かれる感覚」はあまりしなかった。未だ宇宙に何らかのロマンティシズムを託しているのはアンダーグラウンド・レジスタンスくらいのものなのかもしれない。他のテクノは、益々ミニマリズムに向かっていて、あまり外部への意識を感じない。
トランスなんかで未だに「皆既日食」とか、そういう天体イベントと音楽を絡めてやっている人達はいるけれど、あれは単に「インナートリップ」に使うだけだからなぁ。「ニュー・エイジの残り香」に過ぎない分けだし。
誰か、「ポップ・ミュージックと宇宙」みたいなテーマで一冊書いてくれないかな。ハッパ臭くない感じで。
そういえば、月には薄いながら大気が存在するようだけど、そこでは音楽はどのように響くのだろう?真空では音は響かないのは僕でも分かるのけど。やっぱ聞こえないのかな。特別な鳴り方をしてくれれば、本当に「月の音楽」が成立してちょっと楽しいのだけれど。

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実際にエンジニアとしてNASAで宇宙開発に携わるホーマー・ヒッカムの自伝映画。青春物語調だけど、炭鉱の街の現実が見えてちょっと痛い。