作者を貶める為にそいつの作品を引用する表現は正当化されるのか。

http://www.virtual-pop.com/tearoom/archives/000185.html

法的な正当性の話は横に置いておく。そもそも、「クリエイティビティ」を活かすってだけの話なら「著作権」なんて無くして全てのコンテンツの二次利用を許諾したほうがいいに決まってる。

僕はHIPHOPやハウス、テクノみたいな「サンプリング文化」の多大なる恩恵を受けている人間なので、著作権云々の話になると「恐れるな!!盗め!!」以外にあまり言うことはない。この「著作権」って話が出る時は基本的に「お金の話」だと僕は思っている。

でもって、僕がこのエントリにツッコミを入れるならば、「じゃあ歪んでない著作権意識ってなに?」という話になるだろうか。

個人的に面白いと思うのが、例えば作者なりその作品なりになんらかの敬意を払っている場合はともかく、明確にその作者なり作品なりを悪意を持って貶めようとしている表現、作品に関する二次利用に関してはあまり想定されていない点だと思う。

ここ何年かだと、ノイズ/エロクトロニカ系のアーティストにこのような表現をしている人達がいる。

エレクトロニカには何故か音楽への「悪意」をそのまま音楽で表現するアーティストが多かった。

リチャード・D・ジェイムスの「金の為のリミックス」(「バクチク?うん。彼らも酷かったね。ちょっとはマシになっただろ?」とか)、あるいはKID606やV/VM等マイアミ勢のラップトップ・テロリズム(ブリトニー・スピアーズの曲をズタズタにカットアップして原型をなくしたり、あるいはダサダサなエレポップにしてリリースしたり)もある。K.L.Fもある種この範疇にはいるのかな。もしくは「産業ポップスへの悪意」と言い換えても良いかもしれない。

2001年頃がこのテロリズムが最も盛んだったと記憶している(頂点はCEXか?)けど、「本物のテロリズムの時代」になってからは潜伏してしまったように見える。僕の興味が移っただけかもしれないけど。

2006-04-10 - お菓子の犬小屋(inumash) - 断片部

例えばブリトニースピアーズの曲をズタズタに切り裂いた上「Oops!...I Did It Again(失礼!またやっちゃったわ)」なんてタイトルでリリースしたり、そのCDをマネージャーに送りつけ、「訴状はまだ届かない」なんてことをWEBで報告したりする表現に一切のリスペクトは感じられないが、でも僕はこの表現を十分に「クリエイティブ」だと思うし、それを「欲しい」とも思う。

なので、個人的には「著作権の同一性保持権」はおろか、「著作者の名誉声望を害する態様での改変に限り」なんて付帯条件を付ける必要すらないと思っている。悪意だろうがなんだろうが、その作品の二次利用は「正当な手続き=金銭契約(?)」さえ踏めばどのような形であれ認められるべきではないかと思う。権利者側には一切の条件設定などは認めずに、ただ「利用する際の価格設定」を行う権利のみを認めるべきではないだろうか。

作品の扱われ方にあれこれ言うくらいなら、そんなもん自分の金庫にでもしまっておけばいい。尊敬だろうと悪意だろうと、他者と出会って初めてその作品に命が与えられるのであって、(金銭的な部分はともかく)その「扱われ方」までもコントロールしようというのは権利者の傲慢だと思うのだけれど。

まあ、自身の著作に対する愛を語りながらそれを簡単に売り払う作者なんて人もいるわけで、作者(権利者)にコントロール権を持たせることがイコール作品の為になるわけではない、ということは証明されてるわけだしね。


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