今回の問題で「誰が生き残るのか」がはっきりしたんじゃないかな。〜TBSの偏向報道に対するクリプトン社長の対応が素晴らしい件〜

TBS「アッコにおまかせ」の初音ミク特集に批判相次ぐ - ITmedia NEWS
「アッコにおまかせ」の初音ミク特集があまりにもひどくて大騒ぎに - GIGAZINE


今回の件で、「最後に生き残るのが誰か」がより明確になったと思うのは僕だけじゃないと思う。


TBS「アッコにおまかせ」の初音ミク特集に対して開発元が公式にコメント - GIGAZINE

いつも本ブログ、弊社のDTM関連製品をご愛顧いただき本当にありがとうございます。遅ればせながら、本ブログでご挨拶させていただきます。クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表の伊藤と申します。いつもブログをご覧いただき、また数々のポジティブなメッセージを多数お寄せいただき、出来る限りメッセージには私も目を通させていただいておりますが、一ソフト会社のブログにも関らず、こんなにも多くの反響を頂いていることに驚き、いつも励まされております。本当にありがとうございます。

[中略]

なお、今回TBS様の取材にご協力された、task様、Bong-G様には大変感謝をしております。アキバカルチャーに対して色々と批判はあるかもしれませんが、人々の表現に制約はあってはならないと考えてます。どんな文化・芸術活動であれ、その人がどんな人種なのか、その人がどこに住んでいるのか、そういうことを一切抜きにして発表できる自由な場がネットの中にあると思います。誤解を恐れずに言うと、我々特に日本人は"否定"の代わりに"包含"していく知恵を持っているのだと思います。どうかご理解いただきたくお願い申し上げます。

今後は社員一同認識を改め、より一層慎重に、ユーザの皆様が気持ちよく製品を活用・発表できるような「土壌造り」を進めていきたいと思います。それは決してVOCALOID製品を多発するとか、そういうレベルの話ではなくて、DTM更にはCGMの未来に資する、ユーザの皆様が普通に創造力を発揮し、それを認め合い、ピアプロダクションを加速するような。。。良い機会ですので、本ブログを通じてユーザの皆様と前向きのアイディアが共有できれば嬉しく思います。今後ともクリプトン・フューチャー・メディア株式会社をご愛顧いただけますよう、社員を代表してお願い申し上げます。

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役 伊藤博之

http://blog.crypton.co.jp/mp/2007/10/1014.html

上の声明を読んで、!K7というドイツのテクノレーベルがCCCDに対抗して発表した『NO copy protection』というロゴに関する声明文を思い出した。

!K7レコードは「NO copy control」ロゴを放ちます。
音楽に対する敬意を呼びかけるために。

あなたは音楽に対してどんなことをしても良い。 あなたは音楽を1回、2回聴いても良いし、好きなだけ聴くこともできる。 あなたはそんなふうに音楽を一人で聴いてもいいし、友達と一緒に聴いてもいい。 あなたはお気に入りの音楽をプレゼントにしても良い。そして恐らくあなた自身、音楽をプレゼントされることもあるだろう。 あなたが聴いたことの無かった音楽や聴くつもりの無かった音楽に、ふと出くわす事もあるだろう。 昼間のレコードショップや、家庭で、またクラブの夜に、あなたは音楽について語らってもいい。 音楽は文化です。そして、文化は人生です。

これが今から!K7のリリースに新しい「NO copy protection -respect the music」ロゴを付ける理由です。 このロゴは、あなたがCDを購入し、それを好きなように使っていいということを明確にします。 そしてまた、それゆえに、本当に良い音楽は敬意を持って扱われるという特権を与えられるということも明らかです。

「NO copy protection」ロゴは買い手とレーベルの間の相互信頼を示しています。 相互のギブ・アンド・テイクといういにしえの歌は、 「コピープロテクションはリスナー間の結びつきを殺してしまう」という一節を加えました。 そして「NO copy protection」は新たなコーラスを加えます。 それを尊重する人々のみが、また尊重されるのです。 音楽は貴重品です。 音楽を愛する人々は、その度合いに応じた扱いをします。 信頼が大切。 それ以上によいことなどありません。

http://www.mushline.com/junky/2004/02/14/161357

この二つの声明は、様々なコンテンツやサービスにおいて、「誰が主体となるのか」ということを明確に提示するものだと思う。上の声明を、『社長が、このスピードで、ブログというユーザーに近いメディアで真っ先に発表した』というクリプトン社の対応にもっと注目するべきだろう。

多分、これが一般的な企業のように「企業サイトでの公式声明もしくはプレスリリース」という形だったら、クリプトンの評価はここまで上がらなかったのではないだろうか。事実、該当エントリには、(顔文字の使用に関する的外れな批判を除いて)クリプトン社の対応を評価するコメントが圧倒的に多い。

おまけに、今回の報道の(悪い意味での)主役となってしまったユーザーを、“ネットの創造性”と“日本人の性質”から擁護までしている。そして、『ユーザの皆様が気持ちよく製品を活用・発表できるような「土壌造り」を進めていきたいと思います。』『DTM更にはCGMの未来に資する、ユーザの皆様が普通に創造力を発揮し、それを認め合い、ピアプロダクションを加速するような。。。』という結びに至っては、正に「教科書通り」(もちろんいい意味で)のコメントとして評価できるだろう。

このような声明が「それほど時間をおかず」に出てくる背景には、『今回の報道によって汚されたのは、会社でもなく、また「初音ミク」という製品でもない。それを取り巻くユーザーである。』というクリプトン側の基本認識があるように思う。こういった「ユーザー主体」という思想は、同社の「ニコニコ動画」に対する絶妙な距離感にも立ち現れている。

ニコニコ動画では、初代VOCALOIDMEIKO」を使った動画がすでに人気だった。佐々木さんは「初音ミクもニコニコの視聴者の方々に愛されてほしいと淡い期待を寄せていた」としながらも「ニコニコは私のような制作・販売サイドの社員が邪念をもって接してはいけない『聖域』のように感じている」と謙虚だ。

異例の売れ行き「初音ミク」 「ニコ動」で広がる音楽作りのすそ野 - ITmedia NEWS

確かに、「登場するメディア(番組)の選択を誤った」という点においては広報的にマイナスだけれど、しかし事後の対応はそのマイナスを補って余りある効果を生み出していると思う。クリプトン側のこの対応により、「TBSは自分で自分のババを引いた」という構図がはっきりしたんじゃないだろうか。

さて、音楽業界ではCCCDは既に廃れ、DRMも時代遅れのものになり、更に「レコード(CD)」というメディアそのものが見捨てられつつある。ビジネスとしての方針は別にして、「音楽とユーザー」を取り巻く関係性の認識においては、頑なな態度を崩さなかった大手レコード会社よりも、小さなインディレーベルである!K7の方が「正しかった」ことが証明されている。

では、TV局に代表される「放送」という分野ではどうなのだろうか。

ニコニコ動画の運営の特長は、アクティブではなくリアクティブであること。ニコニコ動画がどこに行くかは、運営者ではなく利用者が決める。注意して欲しいのは、ここでいう「利用者」は、単なる「視聴者」のみを指すのではなく、コメントを打つ人からオリジナル作品をアップロードする人まで、著作者から視聴者までの全ての段階の人々を指している。

[中略]

みながニコニコするためには、誰かが泣いているのを放置して自分だけおいしい思いをしている者は戒められなければならない。なぜ「ニコ厨」たちがマスメディアに対して厳しいかといえば、ニコ厨から見るとマスメディアはウハウハしているように見えるからだ。

404 Blog Not Found:ニコニ考 - ニコニコ道が見えてきた

ユーザーの側を向かないサービス、コンテンツが廃れるという事実は歴史が指し示す通り。さて、『TBS(やその他放送局)』と『ニコニコ動画』や『初音ミク』。最後に生き残るのは一体どちらだろうね?

少なくとも「ユーザーがどちらの味方をするか」は、はっきりしたんじゃないかな。そろそろ逃げ出す準備をするべきだと思うけど。