「Perfume『GAME』は失敗した」とか言ってる人って、単に「エレクトロ」が苦手なだけなんじゃないの?

GAME(DVD付) 【初回限定盤】

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http://d.hatena.ne.jp/acidtank/20080417

取り合えず先にいくつか細かいところを突っ込んどくと、

中田ヤスタカは最高のポップス作曲家だが、一流のクラブミュージックのクリエイターではない。しかし、彼が志向するところは後者たりえることだった。

中田ヤスタカ本人は「自分は音楽の人ではない」と明言してる。『ファッションの方が面白い。“音楽の人”はつまらない』とまで言ってる。なので、彼が“クラブミュージックのクリエイター”を志向しているという解釈は怪しい。彼にとっては、初期capsuleのピチカートフォロワーっぷりも、中期の“似非ラウンジハウス”も、後期のエレクトロ路線も、あるいはPerfumeエレクトロ・ハウスも全て単なるヴィークルに過ぎず、音楽の志向を変えることに関しては“洋服を着替える”程度の感覚しかないと思うよ。多分、“一流の○○クリエイター”なんて志向したことは一度もないと思う。

非常にスノッブな気質のあるダンスミュージックシーンで、そんな引用ができてしまう彼は一種の天然君であって、間違っても先端的センスの人ではない。

俺の知らない“ダンスミュージックシーン”があるのかも知れないけど、俺の知ってるダンスカルチャー、ダンスミュージックって“スノッブ”とは程遠いカルチャーだよ。

ある音楽が流行ったらみんな一斉にそっちの方向を向くし、大胆な引用や大ネタ使いに関してもロックとかポップに比べれば遥かに寛大な文化だと思うんだけど。

中田ヤスタカが“先端的センスの人ではない”ってことには同意するけど、逆に“先端的センスの人”でダンスカルチャーにいる人ってAndrew WeatherallGilles Petersonくらいしか思い浮ばないんだけど。“かっこよい”かどうかは主観に寄るから別にして、“先端的センスの有無”と“ダンス・トラックのクオリティ”の間には相関関係はないような気がするけどな〜。

俺はどっちかというと“ベタな人”の方が優れたダンス・トラックをつくるケースが多いと思うんだけど。


んでもって本題。

Perfumecapsule(他は知らん)における、ベタベタなunderworldDaft punkの引用。それら音楽はクラブミュージックというよりも、本屋やユニクロの音楽である(別に悪口を言ってるわけじゃなくて、消費されている対象の話ね)。

『GAME』みたいに電子音がブリブリ鳴り響いてる本屋やユニクロなんて入ったことないんだけどどこかにあるのかな?ちょっと楽しそうなんだけどw

エレクトロ・ハウス」をやるとすぐunderworldDaft punkの引用って言われるけど、それって音楽を構造でしか捉えられないダメな人の典型じゃない?BPM、ベースやキックの形、音のバランス、ネタ使い等々含めてunderworldDaft punkの間にも物凄い差異があるし、Daft punkとJusticeみたいな最新型エレクトロの間にも差異がある。それを無視したらどれも「underworldDaft punkの引用」になるし、更に言えばunderworldDaft punkだって“なんかの引用”に過ぎなくなる。

単に“安っぽい”と言いたいだけなのかもしれないけど、それって別に「中田ヤスタカ」の問題じゃないと思うよ。最新のエレクトロを例に出せば、JusticeにしろDigitalismにしろBoys Noizにしろみんな等しく音そのものは“安っぽい”もの。

(要するにDaft punkからJusticeに行き着くまでの間に“エレクトロ・クラッシュ”があって“90'sアシッド・リヴァイヴァル”があって“イタロ・ディスコ”から“デス・ディスコ”、そしてTTCのトラックみたいな“変態エレクトロ”を経由した「エレクトロ再評価」への道程があり、“音”もそれに沿って変化してるってこと。)

(あと関係ないけど“Kill The DJ”というパーティーDaft punk以降の“フレンチ・ハイプ”の浮かれっぷりに唾を吐いてダンスフロアにロックと退廃を持ち込んだ『Ivan Smagghe=Black Strobe』をみんなちゃんと評価してあげて下さい!)

取りあえず適当に並べてみるから“イメージ”ではなく“自分の耳で”確かめてみればいいと思うよ。
※槍玉に挙がってる『GAME』は音源がまだアップされてないので代わりにcapsuleを置いておく。


MUSiXXX - capsule

Justice - DVNO (official)

Boys Noize - Oh! Oh

DIGITALISM - IDEALISTIC

MSTRKRFT - work on you

SebastiAn - Walkman

Feadz - Numanoïd

Tepr - Minuit Jacuzi (datA remix)

ちなみに、“ダンスとポップを繋ぐ”と評価されてる人たちはこんな感じ。

Bloc Party - Flux

※このヴィデオ最高!!

Hot Chip - Ready For The Floor

一通り聞き比べても、中田ヤスタカのつくるトラックに関して“クオリティが低い”とは思わないし“ずれてる”とも思わないんだよなぁ。capsuleにしろ今回のPerfumeにしろ、ポイントはきちんと押さえた上で“ポップミュージックとして”機能する絶妙なバランスを保ってると思うんだけど。

ぶっちゃけると“『GAME』は失敗”とか言ってる人たちって、『GAME』単体がどうこうとかPerfumeがどうこうとか中田ヤスタカのトラックがどうこうという以前に、彼が参照している“エレクトロ”そのものが苦手なだけじゃないの?もしくは引用そのものが気に食わないとか。

別にそれはそれで好みの問題だからいいんだけどさ、だったら『一流のクラブミュージックのクリエイターではない』とか言ってないで、はっきり『俺はJusticeみたいなエレクトロが嫌いだ!ダンスカルチャーから引用するのも嫌いだ!もっと変態ロリコンポップをつくれよ!』と書けばいいんじゃないかと思う。そうじゃないなら、ちゃんと“音のディティール”に言及しないと意味がないと思うんだよね。

俺はcapsuleよりPerfumeの方が好きで、その理由を色々と考えてたんだけど、多分中田ヤスタカのトラックは完成されてるけどあんまし“熱”とか“執着”その他もろもろの感情の起伏を感じないので「つくりは良い」と思ってもそんなに夢中にはなれないんだけど、でもPerfumeはフロントの3人がその“欠けた感情”を代弁する役割を担っているから、色々と自己を投影して夢中になれるんじゃないかな、と思ってるんだよね。その構図が“Perfumeの奇跡”ってやつだと個人的に解釈してるんだけども。

その文脈で言えば『GAME』は音のクオリティのレベルでも、あるいは“欠けた感情”を代弁する機能においても十分満足できるレベルにあるし、逆にここで『変態ロリコンポップ』に走ったら俺は興味なくなると思うけどな。だって、そんな“ニッチな領域”に彼女たちを押し込めて一体何が楽しいのか全く分からないもの。それこそ別のアイドルにやらせときゃいいじゃん。

俺は今の方向性を支持するし、“かしゆか”が“ぱつゆか”になってどんどんゴスくなってるのも“もっとやれ!”と思うよ。んで、次回作は徹底して“ダーク・エレクトロ”に走って『ゴシック・エレクトロ・アイドル』として世界デビューして下さい!

Black Strobe - Me and Madonna


あ、あと、

中田ヤスタカの作るオシャレなサウンドが最高!」なんて書いてる音楽誌のレビューを見てると絶望的な気分になってくる。

これは俺も絶望的な気分になるわ。そんなレビューしてる雑誌があるのかはわからないけど。