"DENPA!!!"に行ってきたよ。

前回告知したとおり"DENPA!!!"に行ってきたのでレポを。ここで書いていることは僕の主観によります。念のため。

会場に到着したのは14:30くらい。東京のクラブではお決まりのID&荷物チェック(昼開催だけど酒売ってたからね。氏ねよ石原。)をしてた関係でその時点でも結構な人数(100人くらいかな)が並んでました。並んでる人をざっと眺めたところでは服飾・美容系の人が6割、テクノ系のパーティーなんかによくいるような地味なタイプの人が3割、もろ“オタク”な感じの人が1割、という感じ。この辺は普通のパーティーとあんまし変わらない印象。15分くらいで中に入れました。



当日のタイムテーブル。


2フロア制。広さから考えると2Fがメインで3Fがサブ、という感じでしょうか。メインの方はナードコア/Jコア/チップチューンが主体で(一般的にイメージされるような)エレクトロ系はあまり多くはありませんでした。サブの方は普通のアニソンやニコニコ動画ネタが主体。最初にフロアに入った時には「やらないか」がかかってたかな。ただ、この2つのフロアは客層もノリも全く違うものでした(その辺は後述)。

この日は比較的お客さんが少なかったらしく、フロアの埋まり具合は5割程度。体感人数でいうと200〜300人くらいかな。コスプレ率は全体の2割〜3割。普通のパーティーと比較しても女の子比率が高かったと思います。「女の子はみんな可愛いと言っておけ」という神の声が聞こえた気がするので「みんな可愛かった」と言っておきましょう。

いや、単にコスプレイヤーがいるようなイベントにあんまし行ったことがないので比較のしようがないだけなんですけどね。でも華やかでいいですね、ああいうの。もちろん男のレイヤーさんも結構いましたよ。興味なかったので良く見てませんけども…。


混じり合わない2つのフロア
上に書いたとおり、メインとサブと2つのフロアは客層もノリも(あるいはその存在意義も)全く違うものだというのが僕の印象です。

メインの方は既存のナードコアチップチューンなんかのパーティーそのままです。お客さんもそういうパーティーにいる“ちゃんと分かってる”感じの人たち。ノリも既存のクラブと特に変わらず。それ以上、特筆すべきことはありません。

サブの方は完全にコスプレ会場と化していて、そこでアニソンやニコニコの曲がかかっている、という感じ。で、フロアが全体が一体化するような感じもなくて、フロアの前半分はカラオケと同じトーンで盛り上がっていて後ろ半分はほぼラウンジ状態になっている、という。僕はコスプレダンパなるものに行ったことはありませんけど多分こんな感じなんだろうなー、と思いました。

メインの方は正しく“クラブ的”なノリで音楽主体の需要がなされている一方、サブの方は「コミュニケーション」が主体でコスプレも音楽も映像もすべてはその媒介という“ニコニコ的”な需要がなされている。そう考えるとこの「2つのフロア」の位置付けが明確になると思います。その構図が意識的に設定されているのか、それとも結果的にそうなってしまったのかは僕には分かりませんけれど。

で、これはちゃんと書いておかないといけないと思うのですが、この2つのフロアは完全に「別個のフロア」として並列に存在していて、その客層やノリが交じり合っている感じはしませんでした。メインの人たちがサブの方で踊ってるわけではないし、サブのコスプレイヤーがメインに降りてきてフロアで大騒ぎしている、ということもない。相互の横断はとても少ない。

「ひとつのパーティーにふたつのフロアが存在している」のではなく「ひとつのクラブにふたつのパーティーが存在している」と表現するのが妥当というか。互いに行き来できるようにはなっているけれど、それがきちんと機能している感じはあまりしませんでした。

2フロア制を採用しているパーティーは少なくありませんが、ここまでパッキリ分かれているパーティーはあまり経験がありません。“コスプレしている/していない”で分かりやすかった、というのもそう感じる要因のひとつだとは思いますけれど。

ただ一点。これは本当に失敗したと思ってるんですが、開場直後から入ってたこともあって、最後のTECHNORCHさんのDJの前に空腹に耐え切れず食事に出てしまったんですよね。で、残ってたMasaoさんに話を聞いたところ、彼のDJのタイミングでは(サブフロアが終了していた関係もあって)メインに人が集まっていてそれぞれが混在する“カオスな空間になっていた”とのこと。その風景をちゃんと見ていたら、僕の感想はもう少し違ったものになっていたのかも知れません。それを見れなかったのは本当に心残りです。


『“超ライトオタク”は屈託がない!越境する!』って嘘じゃね?
で、上の状況を見た僕の感想がこれ。

だって同じパーティーの隣同士のフロアで、同じネタ(アニソンとかゲームミュージックとか)の別バージョンが展開されいても、そこで“共時”や“交換”をしている感じがしないんだもの。メインの“クラブ的需要”とサブの“ニコニコ的需要”がひとつのフロアの中に混在しているとか、あるいはそれが一体化して何か特異な空間が出来上がっている、というならそう言えるんでしょうけど、僕が見た限りでは(ほとんどの時間)そんな風にはなっていませんでした。

最後のTECHNORCHさんのDJにしたって、オーディエンスが自主的にそのような行動をした、というのではなく単にひとつの場所に放り込まれたからそうなった、ということに過ぎないのではないかと思います。要は“無理やりでっち上げられた”光景なのではないかと。現に“自由に移動できる状況”ではそうならなかったわけで。

だから、この"DENPA!!!"を“超ライトオタク”の文化的自由度の高さの証左として扱うのはあまり筋が良くないと思います。「二つのタコツボ」を無理やり「ひとつの池」に放り込んだってだけの話でしょう。

それでも「“オタクがクラブイベントをやる”というのは今までと全く違うことなんだよ!」と言うのであれば「はい、そうですか。」としか答えようがないですね

あとはまあ“出自の違い”をピックアップして「服飾系の人がコスプレしてアニソンで踊る空間が新しいんだ!」と言われればそうなのかも知れません。少なくとも忌避の対象ではなくなってる、ということは事実でしょう。ただ、個人的には「お椀とお茶碗」程度の違いで大騒ぎしているようにしか見えませんし、そこに興味はないですね。ミクロの事象をマクロに拡大し過ぎではないかと思います。

つかさ、あの光景を見て「超ライトオタクだ!」なんて普通思わないよ、アシッドでも食ってない限りはwどう見ても普通のオタパーティーだと思うんだけどなぁ…。


"DENPA!!!"の価値
今回"DENPA!!!"に行ってみて思ったのは、“超ライトオタクがどうこう”なんて話はただのノイズに過ぎない、ということ。

パーティー自体は物凄くウェルメイドされていて、同人系イベントにありがちな“やっつけ感”は皆無です。一部で言われているほど“内輪感”はありませんし、DJやVJもしっかりしていて、その辺りの音楽的/文化的素養の浅い僕でもすんなり楽しめました。生でTENORI-ONを使っている人を初めて見れたし、ゲームボーイサンプラーとして使っているライブも初めて見たし(そういう音楽は知ってはいたけれどライブは初)、"BPM180オーバーのPerfume"を爆音で体感できたのも面白かった。

それらは個別のライブに行ったり、(もっとニッチな)イベントに行ったりすれば体験できることでしょうけれど、そういったものをひとまとめにして体験できる空間は貴重だと思います。“音楽(文化)のショウケース”となる場は絶対に必要ですから。

"DENPA!!!"は良くオーガナイズされた、"Special"ではないけど"Good"なパーティーだというのが僕の感想です。そして、それを成立させるのに膨大な労力が払われているということは、クラブ・カルチャーの周辺にいる人間なら誰もが理解することでしょう。

そういった事実は、“超ライトオタク”なんていう空疎なバズワードを広めるよりも遥かに重要であるように思います。率直に言って、そのような語り口は、こことかこことかここのように“ポジション・トークが大好きな人たちのネタ”として消費されるだけでしょう。

ま、元の“超ライトオタク云々”に関してはプロレスを仕掛けてるだけなんだろうなー、とは思います。ただ、それにしてもずいぶんと無茶な意味付けをしたもんだな、というのが正直な感想ですね。また、それが現場にいい影響をもたらすことはないんじゃないかな、とも思います。無駄にアンチを増やすだけだし、勘違いした輩も増える。クラブカルチャーは本質的にバカで軽薄なものなわけですし。

個人的には、渋谷axxcisに着いて最初に2Fに入った瞬間、たまたま「Fly To The Leaden Sky(バトルガレッガ St1)」→「Marginal Consciousness(バトルガレッガ最終面)」→「Mutiny - 運命は少女と共に (エスプガルーダ2 St1)」のSTGメドレー*2が流れて酷くびっくりした。その瞬間、「DENPA最高!うがっててゴメン!!」状態にw

(中略)

……と、こんな感じでとても楽しいイベントだったんだけど、まぁ実際現場に行ってみれば、「超ライトオタク」とか、結構どうでもいいっていうか。たぶん、あそこに来てる人はみんな、「自分の好きな曲がクラブでかかって、みんなで歌って踊れたら超楽しいじゃん?」っていう感じで来ているんじゃないかと思うのね。

で、その「自分の好きな音楽」が、自然にアニソンやゲームミュージック等の「オタク文化」だった。そういう世代がある程度のボリュームを持って出てきて、自然発生的にだんだん盛り上がってきてるのがあの界隈なのかな、とそんな印象を持った。

オタク!! DENPA!!! イエ!!!! - 世界のはて

そうそう。Masaoさんがえらく興奮しているのを見て「ああ、ロック系のクラブイベントと同じだ」と思ったんですよね。僕もロンドンナイトとかに初めて行ったときは物凄く楽しかったもんなぁ。中学時代に聞き狂ってたoasisとかで皆が大合唱してるのを見ればそりゃ興奮もしますよ。この体験は、すべての熱量がバンド(アーティスト)に向かう普通のライブでは味わえませんからね。

"DENPA!!!"の魅力ってやっぱそこだと思うんですよね。“超ライトオタク”なんて空虚な言葉に関係なく、あそこはそういう“確かな価値”を提供できていると思います。

つーことで、アニソン・ゲームミュージック同人音楽に興味がある人、コスプレをしたい人、それを見たい人、2chの大規模OFFが好きだった人、「オタクだけどクラブってものを一度体験してみたい」と思ってる人なんかは普通に楽しめると思います。最初はできるだけ大人数で行くのがいいですよ。どこかに知り合いがいる状況だと安心して楽しめますので。後は自分次第。頑張って。

尚、もし可愛いコスプレ少女を紹介してくれたらこのレポは絶賛の文章に変わります。主催者さんからのご連絡をお待ちしております。


おまけ:DENPA!!!の小ネタ
・企画段階では「DENPA!!!でNANPA!!!」とノリノリだった脱オタ志望の男の子がフロアに降りた瞬間に固まってお地蔵さん状態に。酒飲んで酔っ払ったら復活したらしい。

・男子トイレがプチ更衣室化。女装レイヤーさんの生着替えに遭遇したりするとなぜか謝ってしまいそうになる。

NHKらしきTVクルーが取材に入っていて(番組は不明。ネトスタかな?)、Dioのコスプレした人にインタビューとかしてた。でもそのDio様、最終決戦仕様なのか両手にテーブルナイフ装備。危ないから!

・踊れるレイヤーさんがしているコスプレのアニソン(ハルヒとかしゅごキャラ!とか)がかかるとそのレイヤーさんを残して皆座り出す。“リアル踊ってみた”状態に。

・激しくステップを踏んでいる人がいたので「お!ブレイクダンサー!」とか一瞬思ったけど良く見たらダンスダンスレボリューションのステップだった。

・BPM180以上の曲に合わせてオタ芸を決めるのはテロ行為です。控えて下さい。