ネット対策はいいけど、これって「公職選挙法違反」にならないのかな?

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※未成年の選挙運動は禁止されています!

http://www.landerblue.co.jp/blog/?p=7002
※魚拓→http://megalodon.jp/2013-0531-2330-45/www.landerblue.co.jp/blog/?p=7002

これ、

シンガポールの観光客の増加は、STBシンガポール観光局)を中心とする国家プロジェクトの成果であって、ゴミ云々は枝葉の話だよね」とか、

「“犯罪の撲滅と日本人の美徳を取り戻す”なんて維新の議員先生に言われても嫌な予感しかしないんですが…」とか、

「“東京の治安がどんどん悪くなっている”って実際には犯罪件数は着実に減ってるよね」(ってブコメでツッコんだら、いつの間にか“東京の治安が体感的にどんどん悪くなっている”に書き換わってたけど、“体感治安”なんてものを根拠に重罰化を求めるなんてのは、統計見ないで政策立てるよりも分かっててやってるだけ質が悪いと思う)とか、

「というか久々に“割れ窓理論"を大真面目に主張する人を見たなぁ」(個人的には“ゲーム脳”ばりに胡散臭いと思う説)とか、

「橋下発言に関する言説は典型的な歴史修正主義者のそれなので、はてな左巻きの人達に火つけられちゃわないかしら」

などなど、まあ色々とツッコミどころや心配なことがあるわけなんだが、それよりももっと根本的なところで懸念点がありまして。

そもそもこのエントリって「公職選挙法違反」にならないのかな?

実は以前、ある地方議員(東京都じゃなくて、もっと地方の人)の選挙活動をお手伝いした時に、色々と自分で調べたり、選管に問い合わせたことがある。

まず前提として、公職選挙法では、以下の2つの行為は禁止されている。

(1)告示前の選挙運動
(2)選挙期間中のインターネットを利用した選挙運動

(2)については、都議会議員選挙はネット選挙解禁の対象に含まれないので禁止のまま。これは上のブログ主も分かってるみたいだけど、問題は(1)の部分。

選挙の前であっても、例えば自身の政治姿勢や実現を目指す政治施策を訴えるとか、日々の成果を報告するといった行為は一般的な「政治活動」であるとされ、特に制限をかけられることはない。けれども、特定の選挙に出馬することを明示し投票を呼びかけるといった行為は「選挙運動」であると見做され、選挙の告示前に行うことは禁止されている。これは、議員本人だけでなく、そのスタッフや支持者・支援者においても変わらない。

以前、選管に「告示前のブログの活用法」について問い合わせた際には、「あくまでも個々の内容やケースによる」という前置きをされたうえで、このような注意を受けた。

  • 議員本人や事務所などが、投票日などを記載したうえで“投票を促すメッセージ”を発信している場合は基本「選挙運動」と見做される
  • 政治姿勢のアピールや活動の報告は問題ないが、特定の選挙に出馬することとセットで記載した場合は「選挙運動」と見做される可能性が高い

上のエントリでは、海老澤さんへの投票を明確には促していない。けれども、「選挙参謀」を名乗り、「都議会議員選挙予定候補」として海老澤さんを紹介し、公式サイトやソーシャルメディアのアカウントにリンクを貼ったうえで、さらに末尾ではこのようにまとめている。

それでは都議会選まであと1ヶ月ないですが、都民は投票は必ずいきましょう
6/23でございます。海老澤さんの行方を生暖かく見守りたい方はぜひフォローしてあげてください。

僕が確認した選管は東京都とは別の地方のものなので、その基準がそのまま適用されるかはわからないが、仮に同じ基準で判断されるとしたら、この表記は「選挙運動」だと見做される可能性が高い。その場合、今回の都議選の告示は6月14日なので、ブログ主は公職選挙法に違反していることになる。

過去のインターネットにおける公職選挙法違反とその対応を見ていると、いきなり厳罰が科せられるといったことはなさそうなので、直ちに海老澤さんが立候補の資格を剥奪されるとか、ブログ主が逮捕されるといったことはないと思うが、ネット選挙解禁を前に当局も違反行為に目を光らせているだろう状況で、このような危うい表現は控えた方がよいのではないかと思う。

もちろん、ブログ主が僕と同じ疑問を持ち、事前に選管に確認しているのであれば「余計なお世話」というものだろうが。

それ以外に、個人的な意見としては、“ネット”を意識するのであればきちんとネット上の議論をリサーチするべきだと言いたい。

割れ窓理論”に対する認識もそうだし、犯罪件数に関しても、統計を無視して“東京の治安がどんどん悪くなっている”なんてことを主張した場合、ネット上でどのような批判がなされるかは過去の議論を見ればすぐに分かることだろう。“日本人の美徳を取り戻す”という目的についても、手段との乖離が激しすぎ、いささか滑稽に見える。そのような根拠のない(薄い)施策を“公約”として掲げても、明確な支持を示すネットユーザーは多くない事は十分予測できる(そもそもゴミのポイ捨ての問題は、ネットユーザーの関心事とは大きくずれている)。

むしろ、これまでずっと活動してきた“少子化問題”に焦点を絞った方が良いのではないかと思う。この問題はネット上の関心も高く、日々様々な議論が行われている。また、海老澤さんの地盤である世田谷区の待機児童数が“関東圏でワースト”という調査結果もあることから、他所と比べてもこの問題に関する注目度は高いと思われる。そうした少子化問題の解決に向けての具体的な取り組みや、横浜市をはじめとする成功事例などを、短期的かつ集中的に紹介していくことができれば、“ゴミのポイ捨ての問題”などよりも遥かに広く、厚い支持を獲得できるのではないだろうか。当然、選挙のために思いついたように出された“政策”や“公約”よりも、自身のライフワークの延長として出された“政策”や“公約”の方が、説得力が上がるし、支持もされやすいだろう。

その辺を無視して、単にSEOの結果だけを見ているのでは、真に“ネット選挙対策”にはならないんじゃないだろうか。オバマのような選挙対策は無理でも、せめて過去の議論と、主要な主張・批判を整理したうえで、政策や公約を決めるくらいのことはして欲しいと思う。

あと、まあ言っても仕方のないことだと思うんだけど、やっぱり維新はないと思うなぁ…。特に公式サイトで両側にいる2人は。


【6/1追記】
とかなんとか言ってる間に元エントリが削除されたみたい。今日の午前中までは東京の治安と犯罪件数に関する追記なんかがアップされていたので、多分「公職選挙法違反」という指摘を受けての対応なんだろうな。

ということは、告示前の選挙運動に関する認識が甘く、選管に確認もしないままあのエントリをアップしたってことなんだろう。んーやっぱり政治的な主張も含めて迂闊過ぎるというか考えが浅すぎると思うんだよなぁ…。

今後、国政選挙でのネット選挙解禁に伴って“ネットに詳しい人”を参謀役に就ける人もたくさん出てくると思うけど、いっぽうで“ネットに詳しいだけの人”を雇って、今回のように失敗してしまうケースが増えることも考えられる。

ネット選挙への対応を迫られる候補者の皆様にあっては、このような事態にならないよう、参謀選びには十分注意することをおすすめする。