2010年から現在までのFIFA汚職報道まとめ

http://www.47news.jp/CN/201505/CN2015052701001281.html
FIFA幹部6名が20年以上に渡る汚職の疑いで逮捕…14名が起訴へ | サッカーキング
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NOZTC76JIJW901.html
米FBIが、贈収賄容疑などでFIFA役員らを何人も逮捕。会長選挙まであと48時間というタイミングで - NAVER まとめ

この件に関連して、ここ5年ほどの間に報じられたFIFA汚職疑惑について時系列順にざっくりとまとめておきます。抜け漏れに関してはご容赦を。

疑惑が報じられたFIFAの関係者は黒い太字、さらに今回逮捕された人物は赤い太字にしてありますので人物相関図をつくる際にでもお役立てください。なお、役職については当時のもので現在は変わっている人も多いです。

ちなみに現在報じられている疑惑は主に以下の3つです。

  • 2001年に経営破綻したスポーツマーケティング会社『ISL』を巡る贈収賄疑惑
  • 2011年に行われたFIFA会長選挙に伴う買収疑惑
  • 2018年と22年のW杯開催地決定を巡る不正疑惑

【2010年:英国メディアによる報道】

  • 5月:イギリスの大衆紙『メール・オン・サンデー』が、イングランドサッカー協会会長でW杯招致委員長だったデビッド・トリーズマン氏が知人にW杯招致を巡るFIFAの不正について漏らしていた事実を報道(報道を受けてトリーズマン氏は両職を辞任)
  • 10月:イギリスの高級紙『サンデー・タイムズ』がおとり取材を敢行。レイナルド・テマリー氏(オセアニアサッカー連盟会長)アモス・アダム氏(西アフリカサッカー連盟会長)の2名がアメリカの招致団に扮した記者の誘導にひっかかり賄賂を要求する映像が公開される。同紙はさらにFIFA事務局長のミシェル・ゼンルフィネン氏が、一部理事の買収が可能であることを明らかにしたうえで金銭と引き換えに自身が仲介役となる旨の申し出をしたことも報じた。FIFAは賄賂を要求した2人の理事に対して職務資格の停止と罰金を科し、W杯の開催地を決める投票権を剥奪した。
  • 12月:2018年と22年の開催地を決める投票が行われ、18年大会はロシア、22年大会はカタールで開催されることが決定。当初“18年大会の最有力”と見られていたイングランドは全投票数22票のうち獲得できたのが2票のみ(うち1票は自国のもの)という完敗を喫する。以降『サンデー・タイムズ』をはじめとするイギリスのメディアは今回の投票を巡る不正疑惑を厳しく追求していくこととなる。

【2011年:疑惑の追求と会長選挙の混乱】

  • 5月:英国下院の文化・メディア・スポーツ委員会が辞任したトリーズマン氏を証人として召喚。トリーズマン氏はジャック・ワーナー氏から出身国での学校建設費やハイチにおけるW杯放映権の購入費用を求められたこと、さらにニコラス・レオス氏からは爵位の要求、ウォラウィ・マクディ氏(タイサッカー協会会長)からはイングランドとタイの間で行われる親善試合のテレビ放映権を譲渡するよう要求があったことも明らかにした。また、リカルド・テイシェイラからは見返りの内容を明確にするよう求められたことも証言した。証言の模様はTVで生中継されたほか多数のメディアで報じられた。
  • 同委員会はさらに『サンデー・タイムズ』にも不正疑惑に関する調査文章を提出するように求めており、その中で同紙はイッサ・ハヤトウ氏ジャック・アヌマ氏(コートジボアールサッカー協会会長)の2名がカタールからそれぞれ150万ドルを受け取っていたとする証言や、ジェローム・バルク事務局長による“カタールは金でW杯を買った”という旨の私的メールがあることなどを明らかにした。
  • 5月末:チャールズ・ブレイザー氏(北中米カリブ海サッカー連盟事務局長)の内部告発により、ゼップ・ブラッター会長と次期会長の座を争っていたモハマド・ビン・ハマム氏(アジアサッカー連盟会長/カタール出身)が、ジャック・ワーナー氏とともに買収工作を行っていた事実が発覚する。告発を受けたFIFA理事会は聴聞会の実施を決定。ハマム氏は立候補を取り消すも倫理委員会により暫定的な活動停止処分に(同年7月に永久活動停止処分が決定)、またワーナー氏は副会長職を辞任することとなる(後任はジェフリー・ウェブ氏
  • 6月:FIFA会長選(任期4年)。ハマム氏が立候補を取り消したため信任投票となり、ゼップ・ブラッター会長の再選(4選)が決まる。なお、イングランドサッカー協会は一連の不祥事発覚を理由に会長選挙の延期を要求したが支持したのは17協会にとどまった。

【2012年:スイス検察による捜査文書の公開】

  • 7月:スイスの検察当局はISLの破綻に関する捜査資料を公開し、ジョアン・アベランジェ名誉会長(前会長)リカルド・テイシェイラ(ちなみにアベランジェ名誉会長の娘婿)がISLから多額の賄賂を受け取っていたという捜査結果を明らかにした。さらに当時FIFAの理事を務めていたゼップ・ブラッター会長がこれらの事実を知っていたことも明らかとなった。これに対しブラッター氏は自身が賄賂を受け取った事実はないとしたうえで「当時のスイスにおいてこうした行為は違法ではなかった」(スイスでは非営利のスポーツ団体は不正行為取締法の対象外とされる)との認識を示しアベランジェ氏とテイシェイラ氏を擁護した。なおテイシェイラ氏は健康不安を理由に同年3月をもってFIFA理事を含む全ての役職を辞任している(後任はホセ・マリア・マリン氏)。
  • 同月:汚職疑惑が続いていることを受け、FIFAは倫理委員会の調査局長に元インターポールのマイケル・J・ガルシア氏を任命。調査における全権と独立権を認めるとともに、W杯開催地決定を巡る疑惑を徹底的に解明するとした。

【2013年:カタールゲート】

  • 5月:ISLを巡る贈収賄疑惑についてFIFA倫理委員会の調査結果が発表され、既に賄賂の受け取りが発覚していたジョアン・アベランジェ名誉会長リカルド・テイシェイラに加え、さらにニコラス・レオス氏も賄賂を受け取っていた事実が明らかとなった。これを受けてアベランジェ氏は名誉会長を辞任、レオス氏は調査結果が発表される直前に理事職を辞任している(理由は体調不良)
  • 9月:イギリスの高級紙『ガーディアン』がカタールにおける建設作業員の過酷な労働状況について報じる。同紙は主にネパールからの移民が作業にあたっているとし、酷い時には50度近くに達する酷暑のなかで水や食べ物もほとんど与えられないまま僅かな賃金で奴隷のように働かせられていると報告。これを受けて各国の人権団体が是正を求める声明を発表したほか、カタール側も実態を詳しく調べて必要であれば改善すると応じた。

【2014年:さらなる疑惑とガルシア・レポート】

  • 3月:イギリスの高級紙『デイリー・テレグラフ』が、ジャック・ワーナー氏とその家族がモハマド・ビン・ハマム氏の経営する会社から約200万ドルを受け取っていたと報じる。
  • 6月:サンデー・タイムズ』が、モハマド・ビン・ハマム氏がアフリカ諸国のFIFA理事や各国のサッカー協会幹部に対して総額500万ドル以上の賄賂を支払っていたと報じる。賄賂はハマム氏が設立した企業の基金を通じて30人以上のサッカー関係者に支払われたとされる。さらに同紙は、ハマム氏がウォラウィ・マクディ氏を通じてカタールとタイの間で閣僚級会談をセッティングし票の見返りに天然ガスを非常に安い価格で購入できるよう便宜を図った疑惑や、鄭夢準副会長(大韓サッカー協会名誉会長)が役職の保証と引き換えにハマム氏に協力していた疑惑なども報じた。これらの報道を受けてソニーアディダスなど主要スポンサー各社がFIFAに対して適切な調査を要求するという異例の事態となった。
  • 9月:FIFA倫理委員会調査局長のマイケル・J・ガルシア氏が、不正疑惑に関する調査の終了と350ページの報告書(通称“ガルシア・レポート”)をまとめて裁定部門に提出したことを発表。報告書はおよそ1年間にわたる75人以上の関係者への聞き取りとインタビューの録音記録などおよそ20万ページ分の資料を基に作成された。
  • 10月:裁定部門のハンスヨハヒム・エカート氏が個人情報が含まれていることを理由に“ガルシア・レポート”の全面公開を否定。レポートを基に裁定部門の見解を加えた声明を11月に発表するとした。いっぽうガルシア氏は全面公開を要求。またイングランドサッカー協会をはじめ一部のサッカー協会も全面公開を求めた。
  • 11月:FIFAは“ガルシア・レポート”を抜粋した42ページの資料を発表。それによりロシアとカタールのW杯招致に関する不正疑惑は晴れたと結論付け、開催地決定の再投票は行わないとした。
  • 12月:FIFAの発表に対して、ガルシア氏が「レポートの内容が歪曲して伝えられている」として異議申立てを行うもFIFA上訴委員会はこれを却下。これを受けてガルシア氏は調査局長を辞任した。

【2015年:冬季開催決定、そして捜査へ】

  • 3月:FIFAは2022年のカタール大会の開催時期を変更し11月〜12月の冬季に行うと発表。大会期間も短縮され、決勝は12月18日に行うとされた。
  • 5月:27日、米司法省はFIFAの副会長ら14人を贈収賄などの容疑で起訴したと発表。これを受けてスイスの司法当局はFIFA本部のあるチューリッヒに滞在していた関係者を逮捕した。さらにスイス当局は18年のロシア大会と22年のカタール大会の開催地決定についても不正行為が行われた疑いがあるとして独自捜査を開始していたことを発表。3月10日に正式な捜査を開始したとし、FIFA本部を家宅捜索して関係書類やデータを押収した。

ざっとこんな感じです。まとめてて自分でも嫌になりました。FIFA真っ黒すぎぃ!しかもここでまとめたのは“FIFAの活動に関連した不正”だけで、ほかにも協会レベルでの不正や(FIFAの活動に関係のない)個人単位での不正は山ほどあります。サッカー界どんだけ腐ってるんや……ってか来月の女子W杯とか大丈夫なんでしょうか。。。

ちなみに一部報道によると、2011年に行われたFIFA会長選で不正を告発した北中米カリブ海サッカー連盟のチャールズ・ブレイザー氏が今回の捜査にも協力していたとのことです。ただこのブレイザー氏、捜査に協力することになったのは10年に渡る所得税未納がバレてFBIから強要されたからだったうえ、彼自身も横領の疑いで2013年にFIFAから活動停止処分を受けてるんですよね……本当にクズばっかりや……

あと過去の報道を見る限り、カタールが行った不正の捜査に関してはモハマド・ビン・ハマム元アジアサッカー連盟会長がキーマンになりそうですね。こんな人物がAFCのトップやってたんだからそりゃACL絡みでも色々ときな臭い話が出てくるはずです。

なお汚職を含めたFIFAの様々な問題については、イギリス人コメディアンのジョン・オリバーが自身の番組で皮肉たっぷりにまとめてます。気になる人はこちらの動画も御覧ください。

蝙蝠の眼光は判例に徹せず

「頭おかしい」という一言で1万円!? 気を付けたい表現。 - 彼氏は日本人。彼女はフランス人。

『「頭おかしい」という一言で一万円』という判例の詳細はここで読むことができます。

8月23日の判決 クレーマーに頭がおかしいと言ったら一万円 | 広尾総合法律事務所

まずもって『「頭おかしい」という一言で一万円』ではないですよね。最初の「頭がおかしい」と、その言葉への抗議に対する「頭がおかしいからしょうがねえじゃねえかよ」という追撃の二言です。この時点ですでに前提が崩れています。警鐘を鳴らすためとはいえ事実誤認を招くような表現はやめたほうが良いと思います。

ではこの中から判決の根拠として挙げられている部分を抜き出してみましょう。

裁判所の判断

警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮捕,交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当たることをもってその責務とし(警察法2条),警察官は警察法に規定する個人の生命,身体及び財産の保護,犯罪の予防,公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行する義務があるから(警察官職務執行法1条),これらに係る110番等による通報ないし申告に対しては,これを適法,適正に対処すべきであり,その職権職務の遂行において通報者等を侮辱し,その名誉を毀損することがあってはならないことは当然である。

前記認定事実によれば,丁原警部補は,控訴人が放置車両やパイロンを用いた不動産広告が交通の安全を害する危険を生じさせていることなどを申告し,これへの対応を求めたことから,川崎臨港署内において他の警察官をして場所の特定をさせるなどしたが,すぐに撤去等することを繰り返し求める控訴人に対し,国民が出入りし得る同署受付カウンター前において,「あなたは頭がおかしい。」との発言をし,その後控訴人から本件発言をしたことの確認を求められると,「頭がおかしいからしょうがねえじゃねえかよ。」と発言したことが認められる。

この事実によれば,本件発言は,ささいなものあるいは言葉の弾みなどとして看過することができないものであり,控訴人の名誉感情を害するものであって,これにより控訴人が精神的苦痛を受けたものと認めることができるから,本件発言により,被控訴人の公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについて故意によって違法に控訴人に損害を加えたことを認めることができる。

これを読めば分かるとおり、この判決の根拠となっているのは『警察法』と『警察官職務執行法』です。『警察法』は警察の基本的な責務・職務・組織・権限等を規定した法律、『警察官職務執行法』は逮捕や立ち入り、武器の使用といった警察官が職務執行時に必要となる具体的な行為について規定した法律になります(何かとトラブルになりやすい職務質問も『警察官職務執行法』に基づく行為です)。

この二つの法律に基づき、警察官が通報者に「頭おかしい」「頭がおかしいからしょうがねえじゃねえかよ」と言ったことについて“公権力の行使に当たる公務員が職務を行うについて故意によって違法に控訴人に損害を加えたこと”を認めたのがこの判例です。

要するに、ここで“違法”と認定されているのは“警察官が通報者に対して複数回に渡り故意に「頭がおかしい」という侮辱的な言葉を投げつけること”であって“「頭がおかしい」という言葉”あるいは“それを他者に言う行為”それ自体が単純に違法だと認定されているわけではないのです。

さらに、判決の根拠とされている警察法2条と警察官職務執行法1条はともに“警察官の責務・義務を定めるもの”で、警察官ではない人間はこの条文の対象とはなりません。判例は“その行為に対して、どの法の、どの条文に基づいて、どのような判断が下されたか”を基準に考えるものです。従って、警察官のみを対象とする法に基づいて下された判例を根拠に世間一般においてもその行為が違法であると主張するのは単なる誤用です。

このような判例を引くまでもなく“目の前にいる人間に対して何度も「お前は頭がおかしい」と言う行為”が法に触れることは世間一般の常識として広く知られているところです。類似の判例もあるでしょう(探してないので確証はありませんが)。

恐らく“一言だけで”という部分を強調したいがためにわざとこの判例を引いてきたのでしょうが、事の経緯をきちんと読めば分かるとおり“「頭がおかしい」と一言言っただけ”ではありませんし、違法と認定されたのも行為者が警察官だった故の特殊なケースです。

判例はその解釈を巡って専門家の中すら意見が分かれることも珍しくなく、扱いには注意が必要です。いくら自身の主張の裏づけが欲しいからといってもこのように粗雑な扱いをするべきではありません。まして、判決の詳細の確認もしないままスポーツ新聞に載った雑な要約を持ち出して「お前の行為は裁判所が違法だって言ってるぞ!」などと主張するのは自身のリテラシーのなさを露呈するだけの愚かな行為でしょう。

このことは事前に忠告したはずですが、どうやら彼の耳には届かなかったようです。おかげで無駄なエントリを書く羽目になりました。上に出てきた警察官の方の気持ちがわかるような気がします。

言及したことを本気で後悔しております。私が愚かでした。覆水盆に返らず。

“良いフェミニスト”とは“死んだフェミニスト”のこと

ルミネの件はそもそも動画を見ておらず、その是非に関する話題も(ついでに言うと批判されてるブログも)特に追いかけていなかったので何も書けないんですが、それに関連して気になるコメントを見つけたのでピックアップしてみます。

フェミニストを名乗る割に財政苦しい日本女性学会の会員になってるようでもそこに論文書いてるようでもない人たちを「ネトフェミ」と呼んでます http://togetter.com/li/688408

http://b.hatena.ne.jp/entry/245327714/comment/KoshianX

『ネトフェミ』という用語についてはその起源や用例について詳しくないので上の定義が正しいかどうかの判断はできません。フェミニズム批判の用語としてよく使われる『フェミナチ』の類型で『ネトウヨ』と似たような蔑称なんだろうな、ということが予想できるくらいです。

なので、ここで書かれていることを読んでも「ああこの人は自分の気に食わない人たちにそういうネガティブなレッテルを貼ろうとしてるのね」という程度なんですが、問題はこのあと。

まず、上記のコメントに対してid:saebouさんが疑問(というか皮肉ですねこれは)を挟みます。

id:KoshianXさんの「フェミニスト」の定義が意味不明すぎてすごい。その定義だと女性参政権運動家も女子労働の運動家も芸術家もフェミニストにならない。「内村鑑三は教会に行かないからクリスチャンじゃない」みたいな

http://b.hatena.ne.jp/entry/245327714/comment/saebou

それに対する回答がこれ。

まったくその通り。運動家は「左翼活動家」と呼べばいいんですよ。研究をしない人を女性学者を意味する言葉で呼ぶこと自体が誤り。エセ科学と同列です id:saebou/リンクあるんだけどこっちにも http://togetter.com/li/688408

http://b.hatena.ne.jp/entry/245357025/comment/KoshianX

「エレノア・ルーズベルトが聞いたら激怒しそうなコメントだなぁ…」という感想はさておき、いったいいつから“フェミニスト=女性学者を意味する言葉”になったんでしょう?念のため辞書を検索してみます。

デジタル大辞泉の解説
フェミニスト(feminist)
1 男女同権論者。女性解放論者。女権拡張論者。
2 女性を大切に扱う男性。
[補説]英語で2の意は、gallant


大辞林 第三版の解説
フェミニスト(feminist)
1 女性に対する差別や不平等の解消を唱える人。女性解放論者。女権拡張論者。
2 女性を大切に扱う男性。

フェミニストとは - コトバンク

どうやら辞書どおりの意味ではないようです。

で、id:KoshianXさんが貼っていたリンク先のまとめを読むとその論拠らしきものが出てきます。

この“フェミニスト=女性学者を意味する言葉”というのはid:aliliputさん(はてなやってるみたいなのでコールしてみた)の受け売りのようですね。

上の発言を見る限りid:aliliputさんは学術的な価値や態度をかなり重視されているようなのですが、まとめの中にはこの定義の根拠となる文献やそれを主張したフェミニズム研究者の名前は出てきません。過去のtweetやブログでも同じです。

そもそもこの方は自分のことを“フェミニストでもリベラルでもない”と紹介しており、プロフを見る限り専門は図書館学でフェミニズムを研究しているわけでもなさそうです。信じて大丈夫なんでしょうか。

念のため手持ちの文献やネットの論文等をいくつか調べてみましたが「フェミニストと名乗れるのはフェミニズム研究者だけ!」という主張は見当たりませんでした。本当に大丈夫なんでしょうか。

「日本におけるフェミニズムの大きな役割は終わった!必要になったら呼ぶから目立つ行動などせずにおとなしく研究だけをしていてくれたまえ!」という主張をなさっているように見えますが、これが“マトモなフェミニストの方のための弁護”になるんでしょうか。嫌な予感がしてきました。

なるほど、id:aliliputさんが評価しているのは“学問としてのフェミニズム”であって“社会運動としてのフェミニズム”には価値がない(少なくとも今の日本においては)という認識なわけですね。“理論と実践”を強く意識してきたフェミニストたちに真っ向から喧嘩を売る素敵な主張だと思います。でも“マトモなフェミニスト”には支持されるのでしょうね。頑張ってください。

で、これを鵜呑みにした挙句に拡大解釈するとこうなります↓

ゆのっちの顔が浮かびましたがAAを貼るのは控えます)

とりあえずざっと調べてみた限りでは“フェミニスト=女性学者を意味する言葉”というのはただの“俺定義”のようです。id:KoshianXさんはその“俺定義”に基づいてフェミニストを“本物のフェミニスト”と“偽者のフェミニスト”に分類し、偽者の方を『ネトフェミ』という蔑称で呼んでいるわけですね。で、「表に出てきてるのはだいたい偽物=『ネトフェミ』だ」と。

font-daさんは『ネトフェミ』という言葉について“観客席から「俺が認めてあげる良いフェミニズム」と「悪いフェミニズム」に分断していい気分になっているもので、それこそが批判の対象である”と言っているわけですが、そのブコメでわざわざこんな主張をするのは(馬鹿でないのなら)「俺のことを批判しろ!」と言ってるのと同じでしょう。

少し前に、公的・歴史的・学術的な定義を無視した“俺定義”で「アイヌ民族は存在しない」とぶち上げて炎上した(正確には“今もしている”)地方議員がいましたが、その方の姿が思い浮かびます。

声高に権利を主張することなく体制に従順な姿勢を見せるマイノリティ(例:日系アメリカ人)を“模範的マイノリティ(モデル・マイノリティ)”と呼ぶことがありますが、この概念は社会運動に積極的に参加し現体制への不満を述べるほかのマイノリティ(例:アフリカ系アメリカ人)を抑圧する道具としても使われてきました。上で語られている“本物のフェミニスト”と“偽者のフェミニスト”という分類はまさにその類型です。

フェミニズムは女性が権利を求める運動の中で生まれ、育ち、広まっていきました。学問としてのみ発展していったものではありません。いまなお偏見や抑圧に苦しむ女性が少なくない中でフェミニストに「社会運動を行うな。政治に出てくるな」と言うのは(少なくとも“フェミニストとしては”)「死ね」と言っているのと同じです。

従って、id:KoshianXさんとid:aliliputさんの分類をそのまま受け取るのであれば“良いフェミニスト”とは“死んだフェミニスト”のことになるわけです。

現代においてもこのようなことを臆面もなく言えてしまうのは、お二人の主張に反して“まだまだ啓蒙が必要な証拠”なのではないかと思う次第です。

ドン・キホーテのセクマイ退治

●「性的マイノリティの団体・個人の圧力」という多分にフィクショナルな理由に基づき、表現行為に対して自粛を迫るという行為がもしもあったとするならば、それは人権を守るためとても大切な、表現の自由を抑圧するものだろうと考えます。

●それはまた、「性的マイノリティの団体・個人」を怪物視・あるいは怪物化し、性に関する差別を助長するものに他なりません。

特定非営利活動法人レインボー・アクション 『境界のないセカイ』発売中止・連載打ち切り問題へのレインボー・アクションの立場表明

さて、この件に関して、堂々と“「性的マイノリティの団体・個人」を怪物視・あるいは怪物化し、性に関する差別を助長する”ことを書いてる人がいます。

少し前なら自主規制厳しすぎるだろって思ったんだろうけど、とある件で性的マイノリティという刃物を振り回すキチガイの存在とそのやり口を体験したのでなんとも言えない。あれが来るなら自主規制したくもなるわな。

少し前なら自主規制厳しすぎるだろって思ったんだろうけど、とある件で性的マイノリティという刃物を振り回すキチガイの存在とそのやり口を体験したのでなんとも言えない。あれが来るなら自主規制したくもなるわな。 - kyoumoeのコメント / はてなブックマーク

要するにホモテロリスト(エコテロリストホモセクシャル版)とかフェミテロリストみたいなのが怖いってことでしょ。
よーくわかりますよ、ええ。
極一部、極々一部、全体の何億分の一とかそのレベルの性的マイノリティとかフェミニストとかって完全にキチガイですからね、死ねばいいと思いますよ、極一部ですけど。

自主規制したくなる気持ちもわかります - 今日も得る物なしZ

id:kyoumoeの言う“とある件”とはこのやり取りに端を発する揉め事のことでしょう。


ノーマルカップリングという呼び方は差別的だとする腐女子の考え方がわからない - 今日も得る物なしZ(※魚拓)
「どこかの同性愛コミュニティから『ノーマルは差別的だ』っていう意見が出てきてるわけじゃなく」? デマを流さないでくださいよid:kyoumoeさん。 - みやきち日記


この件に関して、id:kyoumoeは“ただ訊いただけなのにみやきちから不当な攻撃を受けた”とまるで自身が被害者であるかのような態度をとっていますが、彼の言うことは事実ではありません。そもそもの原因がどこにあるかはid:kyoumoeが書いた最初のエントリ(魚拓)を読めばわかります。問題の箇所を抜き出してみましょう。

どこかの同性愛コミュニティから「ノーマルは差別的だ」っていう意見が出てきてるわけじゃなく、いつもの「不快に思う人がいるかもしれない」レベルの話なんでしょ?*1

※1:違ったら教えて下さい

でさー、俺がこの手の話で気になってるのが「お前らのそれは異性愛者からの傲慢さから出てくる感情なんじゃねえの」ってことなんだよ。
言葉の端々から「同性愛者は差別されてかわいそう」っていう強者の意識みたいなのが垣間見れるんだよ。

同性愛が「多数派で普通」ってなんつーの、それは異性愛をノーマルと呼んでる理由と何ら変わりがないと思うんですが。
多数とか普通とかってお前らが問題視してる差別意識の現れなんじゃないの。
この言い分だと異性愛は普通じゃないから異常なんでしょ、はい差別ですね。
俺はこういう「私たちはかわいそうな人に対する差別をしません!」みたいな無意識な差別意識がおかしいっつってんの。

俺はだんだん腐女子が嫌いになってきているけど、その理由は腐女子が書いてる作品の内容ではなく腐女子の異常な立ち振舞いだということをはっきり言っておきたい。

最初に抜き出したセンテンスの段階で止めていたなら“訊いただけ”と言えるでしょう。けれども彼はそこで立ち止まることはせず、「ノーマルカップリングという呼び方は差別的だからやめよう」という腐女子の配慮について“異性愛者からの傲慢さから出てくる感情”“「同性愛者は差別されてかわいそう」っていう強者の意識”“「私たちはかわいそうな人に対する差別をしません!」みたいな無意識な差別意識”などという決め付けをしたうえで、それらを“腐女子の異常な立ち振舞い”と明言し嫌悪の理由にしています。

つまり、セクシャルマイノリティを表現と娯楽的消費の対象としているが故に差別的な用語の使用を控えるよう配慮していることに対して、セクシャルマイノリティではない人間が“「不快に思う人がいるかもしれない」レベルの話”という一方的な予断のもと、それぞれの用語が持つ歴史的な背景や配慮が求められるようになった経緯、その是非を巡って交わされてきた議論等を踏襲することもないまま“異常”だと言っているのです。

まともに文章を読める人であれば、これを「ただ“わからない”と言っただけ」「訊いただけ」などと受け取りはしないでしょう。そう読むにはあまりにも予断や偏見が多すぎます。

そして、その予断や偏見の根拠として持ち出されたのが自身もセクシャルマイノリティであるみやきちさんの書いたテキストです。それも明らかに誤用・曲解される形で使われていました。それに対してみやきちさんが怒ったわけです。なぜなら、彼の主張は腐女子に対する偏見の開陳であるにとどまらず“ノーマル”等の言葉の差別性を訴えてきたセクシャルマイノリティを軽視するものでもあるからです(もちろん彼にその自覚はありません)

読んだ。あきれた。うちのエントリを引用するのはいいんだけど、そこから

これをノーマルに当てはめると「ノーマルを正常だというニュアンスで使い同性愛を否定している人は主観に基づく意見ばかりなので重視しなくていい」ということになりませんかね。 どこかの同性愛コミュニティから「ノーマルは差別的だ」っていう意見が出てきてるわけじゃなく、いつもの「不快に思う人がいるかもしれない」レベルの話なんでしょ?*1
http://kyoumoe.hatenablog.com/entry/20150201/1422764650

と言い出すのは牽強附会にもほどがあるし、いち同性愛者として非常に迷惑。

「どこかの同性愛コミュニティから『ノーマルは差別的だ』っていう意見が出てきてるわけじゃなく」? デマを流さないでくださいよid:kyoumoeさん。 - みやきち日記

わたしはわたし自身のために、「自分が過去に書いたものが曲解されて、こともあろうに同性愛者に対する差別的な言辞を正当化するために使用された」ということに対する怒りの告発をしたのです。

「もっと下手に出て、マジョリティの気分を害さないように説明しないと聞いてあげませんよ?」派の皆さまへ - みやきち日記

この怒りと批判は正当なものでしょう。

しかし、こうした批判に対して、id:kyoumoeは自身の言動を省みるどころかみやきちさんに逆ギレし、マイノリティに対する暴言を吐き、挙句の果てに同性愛者に対するヘイト予告まで行います。

こんなこと言われてまでなんで腐女子や同性愛の話する必要ねえもんな。
それならもういないものとして処理するよ、それで済むんだったらマジでそうするわ。
存在すら無視すれば誰も傷つかないし住み分けできてよかったですね、そのかわり二度と目の前に姿見せんなよ。

【魚拓】皆さん申し訳ありませんでした - 今日も得る物なしZ

じゃあもう同性愛者もホームレスも社会から抹殺しろよ。排除しろ。消せ。

【魚拓】inumash様のありがたいお言葉です - 今日も得る物なしZ

本当にこの世から同性愛と腐女子とホームレスが消え去れば無駄に人が死ぬこともなくなると思いました。

【魚拓】inumash様のありがたいお言葉です - 今日も得る物なしZ

ニコ生で同性愛者についてのヘイトを語る可能性があるかもしれないしないかもしれないので罵倒したい人は要チェックですよ

はてなブックマーク - ガムランさんはTwitterを使っています: "ニコ生で同性愛者についてのヘイトを語る可能性があるかもしれないしないかもしれないので罵倒したい人は要チェックですよ"
※当該tweetは削除済

ここまで書けば十分でしょう。要するに、彼は腐女子を批判したいがためにセクシャルマイノリティと差別の問題を持ち出し、無知故にその扱い方を間違えて自爆し、それを批判したみやきちさんのせいにして逆恨みしているだけなのです。彼が多くの人に批判されているのはそのためです。

この件で“性的マイノリティという刃物を振り回すキ●ガイ”なんてものは存在しません。ですが“刃物を振り回すキ●ガイ”と呼ぶに相応しい人物は確かに存在します。

その人物は腐女子を偏見と嫌悪の刃で切りつけ、セクシャルマイノリティを無知と無理解の刃で切りつけ、みやきちさんを逆恨みと暴言の刃で切りつけ、同性愛者やほかのマイノリティをヘイトの刃で切りつけました。おまけに“自分が刃物を振り回している”という自覚もなく、むしろ自分が被害者であると錯覚しています。そして未だに“怪物視・怪物化”という刃でみやきちさんやセクシャルマイノリティの人たちを切りつけ続けているのです。

ドン・キホーテは風車を“巨人”と錯覚して突撃し、無残に敗れます。このエピソードは彼がただの夢想家で突撃した先が風車だったからこそ一種の喜劇としてその滑稽さを笑えるのです。しかし彼が“巨人”と錯覚したのが人形劇をしていたロマの人たちだったらどうでしょうか。そして、それがただの錯覚ではなくロマの人たちに対する偏見や逆恨みによるものだとしたら?それはもう喜劇ではありません。立派なホラーです。

いま見ている光景はまさにそれです。本当に暗澹たる光景です。うんざりします。

「言葉狩り」とか言ってる人たちはもう少しまじめに考えてみようね

はてブで「池沼」と罵るは削除に値する差別的表現でないというのが株式会社はてなの公式見解 - 撫肩い日々
http://zeromoon0.hatenablog.jp/entry/2014/08/02/134914

この件。文章にまとめるのめんどくさいので箇条書き。

まず通報された(であろう)ブコメから。

また見事なパワー系池沼ルックスだな。「おれ、とうちゃん、いうこと、きく」とか言いそう
http://b.hatena.ne.jp/entry/206446073/comment/believemeimaliar

  • 上記ブコメについて、後段の“「おれ、とうちゃん、いうこと、きく」とか言いそう”というコメントから逆算して“池沼”が知的障碍者を意味するネットスラングであることは明らかである。併せて、このコメントが記事中の人物の容姿を揶揄する目的でつけられたものであることも疑う余地はない。
  • 上記の通り、今回は“差別的なネットスラングがその意味/用例通りに使われた”という事例であり、「差別用語をどこまで拡大解釈するか」など考慮する以前の問題である。
  • 通報者は、自身のブログにおいて“池沼”という語句の単純使用を問題視したのではなく“他者の容姿を池沼という差別的な表現を使って揶揄する行為”を問題視し、その対処を依頼したとしている。
  • 当該コメントは、単に“池沼”という差別的な用語を使っただけでなく“他者の容姿を障碍者に例えた上で、障碍ゆえの口調や行動を用いてそれを揶揄する”というものであり、悪質である。
  • 公の場において上記のような行為を行った場合“対象となった人物に対する名誉毀損”および“障碍者に対する差別的意識の発露”と看做され、懲戒解雇等の重い社会的制裁を受ける可能性もある。
  • 上記のような行為を「はてな」において容認するのであれば、それはどのような理由/基準によるものか、また利用規約等との整合性をどうとるのかについて批判も含めて議論されるのは当然である。併せてそれが社会一般の倫理や法規と照らし適正かどうかも議論の余地があろう。
  • “差別的言動について管理者に対処を求める行為”の正当性は、通報者が当事者であるか第三者であるかによって左右されるものではない。無論回数の問題でもない。通報を受けてもなお“当事者同士の問題”にするのはサービスおよびコミュニティの運営者としての責任を放棄するのと同じである。
  • 言葉狩り」とは“特定の語句について、差別的な意味/用法でない場合も含めて一切の使用を禁止させようとする行為”のことであり、今回問題になっているコメントのような“差別的な意図が明白な事例”について、その対処を求めることは「言葉狩り」に当たらない。
  • 言葉狩り」に対する批判は“もし差別的な意味でその言葉が使われた場合は許さない”という前提があるからこそ機能するのであって、実際に差別的な意味で使われている事例すらスルーするのであれば、それは単なる差別の容認/追認でしかない。
  • 非表示対応はあくまでも“無用な衝突を回避するためのもの”であり、上記のような問題行動の抑止や改善を求める場合は無意味である。
  • 「まともに対応するのは面倒だから」と問題行動を放置した場合、最終的にその企業/コミュニティがどのような損害を被るかについては浦和レッズの事例等を参照されたし。
  • 「色々と問題があるけどまともに対応するのも面倒くさいから基本放置」という扱いをされているユーザーについても、何かを勘違いしたり調子に乗って一線を越えた場合はしかるべき人間が制止しなければならない。
  • 罵倒芸”が“芸”として成立するのは“超えるべきでない一線”の見極めができている場合のみ。一線を超えたらそれはもう“芸”ではない。
  • 個人的な意見として、上記のような行為は容認し難いし、また「はてな」という会社およびコミュニティにおいても容認されるべきではないと考える。
  • 過去の事例からして「はてな」の対応に大きな期待はしていないが、せめて上記のような問題点を踏まえたうえで今回の判断を下したと思いたい。
  • ここまで噛み砕いてもまだ「言葉狩り」などと言う人間はこの議論に参加すべきではない。

そんじゃーね。

ドイツ代表の「ガウチョ・ダンス」について

http://footballnet.2chblog.jp/archives/39172652.html
http://derorinkuma.com/world-cup-news/58263
W杯制覇のドイツ代表、祝勝の「ガウチョダンス」に頭悩ませる 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

“ドイツ代表が優勝セレモニーで人種差別をやらかした”と話題になっている件について、いろいろと誤解が多いようなので関連動画を中心にまとめてみます(うるさい動画が多いので再生するときはボリュームに注意してください)。

中には「モンキー・チャントと同じ」と言ってる人もいますが、そもそもこれを「ガウチョ・ダンス」と呼ぶこと自体ミスリードというか“メディアの罠”だと思うんですよね。なぜならあの“中腰になって歩く”というアクションは“ガウチョ(南米人)を模したもの”ではないから。その証拠にドイツ国内のクラブ同士でも全く同じパフォーマンスが行われています。


サッカー以外でも・・・

(0:50くらいから)

これを見ればはっきりわかると思うんですが、問題となったあのアクションは“ガウチョの真似”ではなく“試合に負けて落ち込んでいる人の真似”です。要するに『試合に負けた(負ける)お前らはしょぼくれて歩くけど、試合に勝った(勝つ)俺たちは大喜びしながら歩くぜ!』っていう意味のパフォーマンスなんです。

なので、あそこでドイツの選手たちが歌っている

So gehn die Gauchos, die Gauchos gehen so,
So gehn die Deutschen , die Deutschen gehen so.

の“Gauchos”と“Deutschen”に別の国や人種を入れてもパフォーマンスとして成立します。もちろん上の動画のようにクラブや都市の名前を入れることもできます(多分そっちの方が元祖だと思います)。

実際にイングランドやスペインをネタに、ドイツサポーターが同じパフォーマンスをしている動画もあります。


(しかしベロベロだなこの二人…。)

なお、この件を報じているドイツのWelt紙は“2008年のEURO準々決勝でドイツ代表がポルトガル代表に3-2で勝利した際に、スタンドのサポーターとともに歌ったのが始まり”としているそうですが、それ以前からドイツのサポーターはこのパフォーマンスをしています(下の動画は全て2007年のもの)。



さっき貼ったイングランド相手のパフォーマンスも2007年8月に行われた親善試合(2-1でドイツの勝利)後の光景なので、2008年のEURO以前には既にこのパフォーマンスが定着していたと考えて間違いないです。はっきりしたことは言えませんが、恐らくどこかのクラブのファンがやっていたことをほかのクラブのファンが真似をし、さらに代表まで波及してきたタイミングで選手が乗った、というのが実際の経緯ではないかと思います。

実は今回のドイツ代表と同じようなパフォーマンスを、2006年のドイツW杯で優勝したイタリア代表がやっています。


ここでガットゥーゾは「跳ばない奴はフランス人だ!」と歌っているのですが、「跳ばない奴は●●(対戦相手やライバルチームのファン)だ!」というのはイタリアのサッカーファンの間で定番となっているチャントなんですね。

『跳ばない奴はユベンティーノユベントスファン)だ!』

メロディ(元ネタはイタリア・パルチザンが歌っていた革命歌)なしのバージョンもあります。

長友もやってます。

『跳ばない奴は“赤黒(ACミランのファン)”だ!』

で、この時は決勝の相手がフランス(ジダンが頭突きした試合)だったから「跳ばない奴はフランス人」なんです。もちろん人種差別的な意味はありません。今回のドイツ代表のパフォーマンスはこれと全く同じ種類のものだと思います。

あとは「ガウチョ」についてですが、アルゼンチンではアメリカにおける「カウボーイ」と同じように“男らしい”“英雄”という肯定的なイメージが付加されている言葉だそうです。日本でいうと「武士(もののふ)」が近いのかなと思います。

言葉のチョイスについての是非はもちろんあると思いますが、ブラジルのコリンチャンスパルメイラスのサポーターが「行け!行け!ガウチョ!」というチャント歌ってる動画を見たこともありますし、少なくとも「ニガー」や「チンク」のような“使ったら一発でアウト”な言葉ではないのでしょう(もしそうならもっと叩かれているはずです)。

そうした部分も含めて、今回のパフォーマンスに人種差別的な意図を見出すのは難しいと思います。

もちろん人種差別でなかったとしても敗者を馬鹿にするパフォーマンスであることは間違いないので、その点の批判はあって良いと思います。ただこういう“煽り・煽られ”もサッカー文化の一部ですし、それは今回馬鹿にされたアルゼンチンのサポーターも良く分っているのではないでしょうか。ライバルであるブラジルの大敗をこんな風に煽ってるくらいなので。

ちなみにイングランドではこの手の煽りチャントとして「●●が嫌いなら●●しろ!」というものが定番になっています。

なのでイングランドのサポーターが突然立ち上がったり、

座ったり、

手を叩いたり、

靴を脱いだりしてても、

それは“そのチームが嫌いだから”で人種差別的な意図はないので誤解しないであげてくださいね。

「日本と違って韓国には自浄作用がある」と言っていた人の話

id:kyo_juの人について。

東日本大震災があった年のACL全北現代のサポーターが『日本の大地震をお祝います』と書いた横断幕を掲げて10年間の観戦禁止処分を受けたという事件があったが、その記事に彼はこんなコメントをつけている。

どこかの国と違って自浄作用があるということで。/id:mahal ご指摘多謝。ただ、今回の件へのカウンターで韓国への差別的横断幕を掲げる日本人が出たら、喝采を浴びたり、処分無用論が出たりしそうですね。今のご時世。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20110930#bookmark-61239822

上記についてはid:mahalさん、id:BigHopeClasicさんから事実誤認である旨の指摘があった。

例えば今季のJだと、相手チームの監督への差別的横断幕を磐田サポが掲示した案件において、磐田は当該入場者を無期限入場禁止にしております。多分、その何処ぞの国は本朝ではないでしょうね。>id:kyo_ju氏。

http://b.hatena.ne.jp/mahal/20110930#bookmark-61239822

Jで反韓断幕が過去に皆無だったかは定かではないが、騒ぎになった記憶はない。良くも悪くも閉鎖的なJの観客は、リーグからクラブが処罰される原因を作る輩を絶対に許しはせんよ、ということで> id:kyo_juさま

http://b.hatena.ne.jp/BigHopeClasic/20110930#bookmark-61239822

その後の韓国の“自浄作用”は下記の通り。

【2012年8月:ロンドン五輪
http://www.47news.jp/CN/201208/CN2012081101002826.html
朝日新聞デジタル:韓国世論は支持大勢 サッカー日韓戦後の「領有権」騒動 - ロンドンオリンピック2012

【2013年6月:ブラジルW杯最終予選】
イラン、韓国をFIFAに提訴…選手への殴打やピッチへの投げ込みに対し | サッカーキング
http://footballnet.2chblog.jp/archives/28596815.html

【2013年7月:東アジア選手権
http://www.47news.jp/FN/201307/FN2013072801001767.html
サーチナ-searchina.net

なお、“差別的横断幕”に対して日本のサッカーファンやサッカー界がどのような態度をとったのかは記憶に新しいと思うのでここではまとめない。

普通、自分の誤解なり偏見なりがここまで明白なものになれば、次にサッカーの話題に触れる時にはもう少し慎重になるか、さもなくば触れること自体を控えると思うのだが、どうも彼はそういう思慮に欠けているらしい。

人はどのようにしてファッショに絡め取られていくのか、的な。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20131025#bookmark-166669390

"誰も知らない土地でブラック企業に勤め、残業手当もなく肉体労働をし、言葉もろくに通じない人達と隣人〜そういった辛さから逃れるために、彼らは地元のサッカーチームを応援し始めた"サッカーは人民の阿片。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20131029#bookmark-165886946

これを見る限り、どうやら彼はサッカーファンへの偏見を隠すつもりはないようだ。そんな彼が“サッカーにおけるナショナリズム”についてこんなことを言っている。

"日本勝った""日本しゅごい"という形での同一化欲求の充足が危険かつ倫理的に不正なのは論をまたず、かつ同時に"より穏当な捌け口なんだからいいんだよ"的な統治者目線での正当化も許すべきでないと思います。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20140626#bookmark-201387122

彼にとって、他者からそれと指摘されてもなお無知や偏見によるヘイトを続けることは“倫理的に不正”ではないようだ。恐らく“サッカー好きなんて自分じゃ何も考えられない人種なんだからどう扱ったっていいんだよ”的なマルクス主義者目線で正当化しているのだろう。“サッカーは人民の阿片”なんて古臭い言葉を持ち出すくらいだし。

id:penguaholic 私の場合スポーツを応援行為の心性の問題(特にそれに他人を半強制的に巻き込む心性の問題)一般を問題にしており、サッカーナショナリズムにもこうした良い面が、みたいな話には興味ないです

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20140627#bookmark-201414310

サッカーファンへの偏見を捨てられない自分の心性は気にならないようだ。

id:inumash 他国のサッカー狂より自国のそれの方が圧倒的にこちらを巻き込んでくる危険・不快の度合が高いので敏感に反応するのは当然です。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20140627#bookmark-201470930

在日韓国・朝鮮人の“危険・不快”を主張しそれに“敏感に反応”しているヘイトデモの参加者と同レベルの言動である。

"マナーの優秀なボクたち日本サポーター""自浄作用もある日本サッカー界"のようなのっぺりした"きれいな日本"像で日本中を塗りつぶしていく一翼をあなたの行動や言説も担っているのですよ。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20140627#bookmark-201481862

最初に「自浄作用のない日本サポーター」という偏見にまみれた像を塗りつけようとしたのは自分だという事実を忘れてしまったようだ。

それにしても、inumash氏のように"リベラル"を標榜しながらサッカー狂への反発や批判の存在自体にきわめて不寛容な御仁を眺めていると、正直私の"偏見"はより強化されるほかないんだが。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20140627#bookmark-201471190

“リベラル”が無知や偏見に基づくレッテル貼りを許容する思想だとは初耳である。

サッカー狂やそのナショナリズムとの結合に対する批判者に批判の資格としてあなたのような重度のサッカー狂と同等のサッカー関連知識を要求する時点で、批判の存在を認めないに等しいということは自覚してますか?

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20140627#bookmark-201481486

「サッカーについてあれこれ勉強するのはいやだけどとにかくサッカーファンは腐したい」という本音を少しは隠した方がよいのではないか。なお1年の観戦数が30試合程度でアウェーも近場しか行かないような人間は“サッカー狂”とは呼ばれない。

私の場合歴史修正主義者と事実認識で議論はしておらず(そんな知識はない)その"たましいの悪さ"を指摘していた訳です。今回"たましいが悪い"のはナショナリズムに火がくべられる状況への批判を封殺しようとする側かと。

http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/20140627#bookmark-201562754

知識がなくとも“たましいの良し悪し”が分かれば歴史問題に関する議論に参加しても良いそうである。幸福の科学「従軍慰安婦は“たましいが悪かった”」などと主張し始めないか心配だ。

こんな人に擁護されて韓国の選手やサポーターはさぞ喜んでいることだろう。

最後に少しだけ真面目な話をすると、サッカーとナショナリズムについての問題は、自分の無知や偏見を正当化するために使うことが許されるほど軽いものではない。海外では実際に人が死んでいるレベルの重い問題だ。それを批判するなら真面目にやれ。中途半端に持ち出すな。

なお、penguaholicさんが彼に薦めた木村元彦氏の「悪者見参」は、“サッカーナショナリズムにもこうした良い面が、みたいな話”とは正反対の“内戦によってむき出しになったサッカーナショナリズム民族浄化に加担した事例”を含めたユーゴ紛争の秀逸なルポルタージュであり、ユーゴスラビアの民族問題を考える上でも必読の名著なので未読の人は是非読んでみてほしい。

悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)

悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)