「洋楽レコードの邦題」はやっぱり馬鹿だった。

既に廃れたかに見えた「洋楽レコードの邦題」が復活の兆しを見せているらしい。

きっかけは多分これ。

ときめきダンシン(期間限定特別価格)

ときめきダンシン(期間限定特別価格)

原題は『I DON’T FEEL LIKE DANCIN’』

イギリスやアメリカでのファン層や、「ディスコ+グラム」という形での売り出し方を考えると、この「ときめきダンシン」という邦題はそう悪くない。馬鹿っぽいし、Wham!の『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ(原題:Wake Me Up Before You Go Go)のパクリっぽいけど、比較的「良い」部類に入る邦題だろう。

そう、80年代くらいまでの洋楽には、「わけのわからない邦題」が付きものだったわけで、それが復活してるんだから、面白いサンプルが手に入るはず!!と思ってちょっと探してみた。

でも、その後に続いたものの出来がすこぶる悪い。直訳しただけだったり、無難にまとめ過ぎて、正直「邦題つける意味あるの?」というものばかりだったのだが、最近いいサンプルを見つけた。

フィーバーは止まらない(初回限定盤)

フィーバーは止まらない(初回限定盤)

アメリカのエモ・バンド(といっても、「Discord」系のハードコアを経由した「EMO」ではなく、単なるポップ・パンクの一形態)で、昨年秋頃にデビュー、シングルが全米No,1となり、イギリスでも大ブレイク中。

アルバムの原題は『 A Fever You Can't Sweat Out 』なので邦題としては平凡なのだけれど、実はアルバム全曲に邦題がついており、それがなかなかにいい味を出している。

以下アルバム収録曲タイトル。

01. 開幕
(原題『Introduction』)
02. 殉死と自殺の差は記事になるかならないか
(原題『Only Difference Between Martyrdom and Suicide Is Press Coverage』)
03. 機械が書いたロンドンが招いたお金の歌
(原題『London Beckoned Songs About Money Written by Machines』)
04. 朝食には釘を、おやつには鋲を
(原題『Nails for Breakfast, Tacks for Snacks』)
05. 夜間攻撃
(原題『Camisado』)
06. さあ踊ろう
(原題『Time to Dance』)
07. 嘘は女の子が服を脱がずに楽しめる最上の方法
(原題『Lying Is the Most Fun a Girl Can Have Without Taking Her Clothes Off』)
08. 幕間
(原題『Intermission』)
09. 君がやってくれた方がいいのに
(原題『But It's Better If You Do』
10. アイ・ライト・シンズ・ノット・トラジェディーズ〜いつわりのウェディング
(原題『I Write Sins Not Tragedies 』)
11. いつもエステバンを神に感謝
(原題『I Constantly Thank God for Esteban 』)
12. 君が気づいていないだけでこのテーブルに番号があるのはいい意味がある
(原題『There's a Good Reason These Tables Are Numbered Honey, You Just ... 』)
13. 神を創造し、僕達は話そう
(原題『 Build God, Then We'll Talk』)

一向にやる気を感じさせない直訳っぷりが素晴らしい。「あ″?仮名と漢字にすりゃあいいんしょ?」という翻訳者(これでコピーライターが付いていたら笑う)の本音がまるで隠されていない。

あまりに直訳すぎて、3曲目とか4曲目が凄いことになっている。あと、全体的に長い。長すぎる。こんなタイトルの長い邦楽はめったにないぞ。邦題をつける意味を本当にわかってるのだろうか。

去年から話題になっていたので、その存在や曲は知っていたのだけれど、日本盤がこんな素敵なことになっているとは思わなかった。今年のサマーソニックにも出演が決定しているのでちょっと楽しみだ。ま、観ないだろうけど。


そういえば、Gears of Warの日本版CMがあまりに酷過ぎて、本国で話題になってるらしいけど、たしか米国版のCMで流れている曲は、ゲーリー・ジュールズが2001年に出したティアーズ・フォー・フィアーズのカバーで、映画『ドニー・ダーコ』のエンディング曲としてアメリカやイギリスでそこそこヒットしてたはず。

歌詞はこんな感じ。

まわりはなじみの顔 疲れた場所 疲れた顔
日々の競争に朝早くからいそいそと
行く先はない あてどない
涙が眼鏡からあふれ出る
表情もなく 表情もなく

「80年代の陰惨さ」と「10代の憂鬱さ」を描いたとして映画の評価も高く、多分、米国版のCMは『ドニー・ダーコ』のイメージよろしくゲームそのものの世界観を一兵士=プレイヤーの視点から切り取ることを狙ったんだと思う。

まあ海外のマーケティングと比べて日本が劣っているかは知らないけれど、このゲームをPRするのに「アイドルとのタイアップ」を選択している時点で負けだわな。

どうせなら三浦建太郎弐瓶勉あたりとコラボレーションすれば良かったのに。