毒されているのはボクシングだけじゃないぜ。〜「亀田兄弟」と「日本あざみ党」〜

亀田興毅×ランダエタ まとめ
渡辺塾国民学校(掲示板炎上→閉鎖

どっちも「何かを捨てている」という点において似通っているわけだが。

亀田兄弟とは知り合いでもなんでもないし、ボクシングに思い入れがあるわけでもない僕が業界の裏事情を知るわけもなく、「何であんな結果になったのか」については知る由もない。(その辺は「切込隊長」のエントリでも見て下さい。)

ただ、日本あざみ党(渡辺塾国民学校)に関しては、親しい人が彼のすぐ近くにいて事情も知っている上に、ライブでの彼の魅力も知っているので、如何ともし難い感情が込み上げる。

エンタの神様」に出演して以降、散々「鳥肌実のパクリだ」なんて糾弾されてる彼だけど、実は「エンタ」出演が決定した時、既に鳥肌さんのところに断りの連絡を入れていたって事は誰も知らないんだろう。

鳥肌さんはずっと一緒にやってきた作家さんと別れて以来、小さな劇場でお笑いライブをやりたかったらしく、偶然見つけた渡辺塾国民学校(日本あざみ党)の芸風が気に入って、声をかけてくれたんだそうだ。二人で酒を飲みながら、「どんな面白いことが出来るのか」について朝まで語り合っていたらしい。

ライブを見れば分かるけれど、徹底的なまでにコンセプシャルなキャラクターでネタを積み上げる鳥肌さんと、「ダメ人間オーラ」をナチュラルに出しながらまるで当たり前のように放送禁止用語や差別ネタを繰り出してくる渡辺塾さんの芸風は似て非なるものだ。

鳥肌さんの魅力はキャラクターと言葉による「生のドライブ感」なのに対して、渡辺塾さんの魅力はダメオーラと散らかった思考による「負のトリップ感」なんだと思う。個人的には、体についた垢のように倦怠感をまとわりつかせたままの渡辺塾さんの方が好みだ(自分の大学時代の会話に近いからかも知れないけど)。まあ、お笑いに関しては素人だから的外れなのかもしれないが。

今回のエンタ出演に関しては、半年以上前から、電波に乗せることを前提に番組側と綱引きを続けてきたけれど、結局、番組の意向を完全に飲む形での出演になったそうだ。しかし「渡辺塾国民学校」という芸名も駄目。ジャージに入れていた日章旗や色々なオリジナル教育標語も駄目。「教育者として保護者に語りかける」という本来のコンセプト(これはニート対策とかに出てくる精神論を振りかざすだけの馬鹿への当てつけなのだが)も「教育者の不祥事が多い」という理由で使えず、挙句ネタは番組の放送作家が書いたネタをそのままやらされるだけ。これでどのように「芸人」として成立するのかと、僕は疑問に思うのだけど。業界的には当たり前なんだろうけどね。

でもって、局側のあからさまな演出は明らかに「鳥肌実」を意識したもので、放送後のこの反響はまさに「してやったり」という状況である。そう。叩いている人達も結局は彼等に乗せられているだけなのだ。

渡辺塾さんはその辺りの構図もしっかりと理解していたので、事前に鳥肌さんに連絡を入れていたわけだし、このような形で世に出ることのリスクも認識している。

亀田兄弟については良く分からないけど、渡辺塾さんに関しては既に自分がただの駒でしかないことを十分承知している。でも、それでもやはり世に出たいのだ。30歳を過ぎて売れないお笑い芸人をやってるってことがどういうことか、想像してみたらいいだろう。もう戻れない。ずっと潜水していた人は、何かを切り離してでも、一度でもいいから水の上に出てみたいのだ。それを誰が咎められよう。

これを理由に、彼を擁護しようとは思わない。結果はあくまで結果なのだから、僕は目の前に映し出された現実において判断するべきだと思う。実際、エンタ出演時の彼は本当にゴミのようだったから。

ただ、僕にはリングの上で亀田がガードを固めて必死に耐える姿やそれに被される煽りの実況と、ステージの上で他人の書いたネタをやる彼、そしてそれに被される録音された笑い声とが、重なって見えてしまった。

そしてその背後には薄ら笑いを浮かべて他人事のようにそれを眺めたまま、利益だけを吸い上げる奴らがいる。

「渡辺塾国民学校」こと「日本あざみ党」は、既に次回の放送に向けた打合せに入っている。